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酒場遺産 ▶46 浅草 水口食堂 浅草の日常を楽しむ

 昭和25年(1950年)創業の水口食堂は、浅草六区で永く愛され続けてきた東京を代表する食堂と言ってよいだろう。創業以来、戦後の浅草の復興と興隆とともに、水口食堂は時代を歩んできたという。

 浅草演芸ホールにも近い狭い路地に面し、青い庇(ひさし)に「水口」と書かれた白字が目立つ。美味く、安く、敷居の低い食堂だ。1階厨房の上の壁に掛かる100を超えるメニューは壮観だ。ひとり客からグループまで客層も広い。最近は外国人の客も多く、割烹着姿のスタッフは流暢な英語で注文を取る。1階約40席、2階は座敷を含めて約50席。

 メニューは単品から定食まで、品数の多さと幅広さでも知られる。瓶ビール大瓶(アサヒ・キリン・サッポロ)は690円、小瓶はサッポロ黒ラベル、生ビール。日本酒は新潟新発田「金升」一合500円、地酒は霞の里・しろうま・鶴齢(一合630~750円)とセレクトが渋い。その他 チューハイ・焼酎・ワイン・ウイスキーなど一通り何でもそろえている。

 100超のメニューからいくつか選ぶとすれば、いり豚(玉葱と豚肉をケチャップで炒めたオリジナル料理)と肉豆腐だろうか。他に野菜炒め・麻婆豆腐・イカバター焼きなどの炒めもの、焼魚・煮魚・フライ。先日頼んだ赤魚粕漬煮つけは絶品だった。多くは600~700円程度で、400円ほど足せばご飯・味噌汁・お新香をつけた定食になる。冬は寄せ鍋・牡蠣鍋・湯豆腐・肉豆腐・豚汁が美味い。料理と酒の選択肢が広く、シッカリと飲む人たち、丼物だけ食べて変える人たち、家族で夕食を取りに来る人たちなど、客層も広い。浅草の日常を楽しむには持ってこいの骨太食堂だ。(似内志朗)