前回紹介した高瀬川近くの「おとみ」から歩いて約5分、錦小路沿いの京漬物専門店の老舗「錦・高倉屋」の経営する立ち飲み処「賀花(がばな)」。この10年ほど京都に来ると必ず立ち寄る店だ。漬物を肴に地元京都の酒「澤屋まつもと純米酒」を飲む。店の前には「酒と京漬物」と書かれた看板が立てられているが、なるほど、日本酒と漬物だけあれば、これ以上何もいらないと思わせる相性の良さだ。
漬物は旬の京野菜を使った浅漬けや、伝統的糠漬け、千枚漬けなどの小皿、酒盗、菊葉皿、蟹味噌、昆布醬油煮などの小皿、漬物をアレンジした創作的な一品料理も美味しい。いずれも、300~600円程度と安い。日本酒は京都伏見の酒蔵の銘柄が中心で、まつもと、富翁、みやこつる、松の司楽、神蔵、西山など、一合あたりの価格は500~800円程度と手頃な価格帯である。
平安時代には既に魚市場があり、江戸時代には青物、魚介類、京野菜、漬物などの食材が集まる商業地として発展した錦小路は、現在も全長約390m、130以上の店舗が軒を連ねる「京の食文化を支える重要な存在」と言われる。しかし、最近はインバウンド目当ての高単価で子供騙しのツーリストメニューの店が多いことに気づく。
儲けんがための観光地になっていく姿は悲しい。以前、賀花の帰りに寄った伝統的な銭湯「錦湯」も、跡形もなく取り壊されていた。こうした中にあり、「錦・高倉屋」三代目店主である井上英男氏(バッキー井上)が手掛ける立ち飲み処「賀花」は、長年培った京野菜の漬物と酒を、気軽に楽しめる場である。この店のスタッフと話をすると、料理や酒を提供するだけでなく、人と京都の食文化が繋がる「場」として捉える店主の哲学と姿勢が浸透していると感じる。何度訪れても飽きさせない立ち飲み屋である。(似内志朗)




