オリックス銀行(東京都港区、錦織雄一社長)、フィリックス(愛知県名古屋市、水野秀則社長)、湘建(神奈川県横浜市、松尾健太郎社長)は9月29日、3社の協働により開発した、愛知県内で初(3社調べ)となる「Nearly ZEH-M」仕様の投資用アパートが竣工したことを発表した。オリックス銀行が融資、フィリックスが物件開発、湘建が販売の面から、それぞれ投資用不動産分野におけるZEH-M供給の促進を図る。
今回の協働事業では、愛知県内で投資用アパートの開発・建築事業を展開するフィリックスが、同県名古屋市昭和区で「Nearly ZEH-M」仕様の「Schueller kawana1」(3階建て、総戸数9戸)を開発。個人投資家が同物件を取得する際の購入資金を、オリックス銀行が通常よりも0.05%優遇した金利で融資し、販売を担当した湘建により既に売却先が決まっているという。「Nearly ZEH-M」仕様の投資用アパートに関しては、同銀行による個人投資家への融資、フィリックスによる企画開発は共にそれぞれ初の試みとなる。
協働によるZEH-M事業の背景には、投資用の賃貸集合住宅におけるZEH-M比率の低さとその課題がある。水野社長によると、新築戸建て住宅におけるZEH比率(20年度、戸数ベース)は約16%、注文住宅に限れば約24%に上る一方、集合住宅におけるZEH-M比率は約1.2%(同、着工面積ベース)にすぎない。利回りが優先される投資用物件においては、開発および取得コストの上昇につながるZEH-M化はほとんど進んでいない。
差別化と市場開拓狙う
各企業とも、投資用物件における環境性能を推進するという大きな方針は共通しているものの、実際的な事業として取り組む上では、商品の差別化と個人投資家に対する訴求力向上という効果を強く意識している。
今回の物件の場合、ZEH-M化に「金額にして約880万円、開発コスト全体の1割程度」(水野社長)を要した。不動産投資において重視される「長期的な安定投資」につながる性能で商品力を高めたという認識だ。実際に、今回の物件は既に販売および融資先が決定しており、居室の入居についても「大部分は進んでいる」(水野社長)と手応えを見せている。
同銀行は既に、ZEH-M仕様の投資用ワンルームマンション開発に関して、23年度中に融資残高100億円という目標を設定している。他方、投資用アパートについてはZEH-M化の事例がほぼないため、まずは開発事業者への働き掛けを重視していく構えだ。またフィリックスは、来年度70~80棟程度を目標とする投資用アパート開発のうち、8~10棟程度を検討していく計画だ。