サンセイランディック 松﨑隆司社長に聞く
底地に関する権利調整事業を手掛けるサンセイランディック(本社・東京都千代田区)。
1976年創業の、権利関係が複雑化した貸地や居抜き物件を専門的に扱う珍しい会社だ。ニッチな市場ながら全国規模で展開し、2014年12月には東証一部に上場した。そこで松﨑隆司社長に、同社の強みである権利調整事業の現状と今後の展開を聞いた。
― 底地に関するビジネスとは。
「底地とは、土地と建物の所有者が分かれている土地のこと。自由な活用ができないため、資産価値は低いとされている(図1)。権利関係が複雑になっているケースが多く、相続などを機に整理しようとしても当事者同士で調整するのは難しい。当社では基本的に、そうした旧借地法に基づく底地を買い取り、関係者の意向に沿った形で複雑に絡んだ権利関係を解きほぐし、調整していく。関係者の意向は多様だ。底地を求める借地人には売却し、借地権を手放したい人からは買い取る。また、底地は所有した状態でいたいが、その管理が手間だと感じている人からは、管理業務のみも請け負っている」
「更に、道路付けが弱い借地の場合には、自治体と協議して不動産価値が上がるように道路を整備することもある」
隣地と一体で売却
「また、最近の特徴的な事例を一つ紹介したい。ある一続きの土地に、底地3区画、所有権2区画が入り混じっていたケース(図2)。当初は、通常の権利調整として、それぞれ借地権者には底地を売却し、所有権区画は単独で売却することを予定していた。しかし、調査や交渉を続けるうちに、隣地にマンション建設計画が持ち上がっていることが分かった。そこで、隣地の所有者と交渉し、権利調整を進めていた敷地と一体でマンション事業者に売却することができた。それにより、当初予定よりも販売価格が上昇したことは、コンサル能力の成果といえる。もちろん各区画の権利者の意向を聞いたうえの判断であり、当初予定通りに借地権者に底地を売却した区画もある」
― 居抜き物件事業も柱の一つだ。
「老朽化が進み、空室が多くなった賃貸物件を買い取り、借家人の明け渡し交渉を行う。必要に応じて借家人の移転先の手配なども行う。その後、更地にしてディベロッパーなどに売却する」
「先般取り組んだ事例としては、名古屋の築35年の賃貸アパート(全10戸)。空室が多く、当社が買い取った時点で入居しているのは2戸のみ。いずれも高齢の方がお住まいだった。そこで、ご家族の方を交えて移転先を探し、お二方とも次の住まいが決まった。そして、建物を解体し、敷地(150坪)を建て売り業者に売却した。このときは市況環境の良さと販売努力が相まって、当初予定よりも高い価格で売却できた。こうした古い賃貸住宅では、オーナーが建て替えたくても、入居者との交渉がスムーズに進まないケースが多い。当事者間で調整するのは難しく、調整能力が問われる分野だ」
景気に左右されない
― 会社の設立経緯は。
「1976(昭和51)年に、創業者が不動産の賃貸・売買仲介を目的として東京・銀座に設立した(当時の社名はサンセイサービス)。その後、社名をサンセイに変更。93年頃から底地の取り扱いを本格的に始めた。創業者が、バブル崩壊後、景気に左右されにくいビジネスとして、この底地事業に着目したと聞いている。その数年後、底地に次ぐ権利調整事業として、居抜きの取り扱いも始めた。同時期(97年・平成9年)に現在の社名に変更した」
「ニッチな事業領域ながら25年に渡り実績を積み上げてきたことで、このほど全国住宅産業協会の『第1回ニューアイデアビジネス賞』大賞を受賞し、先日の総会で表彰された」
― 最近の業績はどうか。
「直近の16年12月期は、売上高123億円、営業利益14億4600万円、経常利益13億2800万円、純利益8億5300万円で、いずれも前年業績を上回った。底地は362区画(前年は350区画)を販売した。自社の強みが生かせている」
人材育成がカギに
― 御社の強みとは、どのようなものか。
「大きく分けて2つある。一つは全国展開していること。東京本社のほか、札幌、仙台、武蔵野、横浜、名古屋、大阪、福岡に支店を置いている。8拠点体制だ。地域が分かれているため、売り上げなど経営面では、リスクを分散できている。また、同じ底地の権利調整事業とはいえ、拠点ごとに地域性もある。各支店担当者がそうした違いや共通点を持ち寄り、成功事例を含めて情報共有できているのもメリットだ」
「もう一つは、人材育成。法律的な知識も必要だが、社員に一番求めているのは『ヒューマンスキル』だ。権利調整を行う上で欠かせない。まずは相手(顧客)の意見を聞くこと。ニーズを聞き取り、的確に把握する。それにより、絡まっていた権利関係の調整の道筋が見えてくる。人として当たり前のことのようだが、実際は難しいものだ。当社では、人材育成のためにマニュアルも作成しているが、基本的には現場で経験を積むことで、このスキルは育つと考えている」
「現在、入社から3年で一人前になることを目指して教育している。今、こうした人材が徐々に育ってきたことで、仕事のスピードもアップしている」
仕入れは仲介会社経由で 上場で紹介案件増加
― 底地などの情報はどのように仕入れるのか。
「基本的に、地域の不動産仲介会社を介して仕入れている。そのためにも、各地に支店を置き、地域に密着して、情報提供者となる仲介会社の信用を得ることが重要だと考える」
「2年ほど前に東証一部に上場した。認知度や知名度が高まり、証券会社や保険会社、金融機関などからの紹介案件も増えた」
― 仲介会社との取引はどのような流れになるのか。
「地域密着で事業展開していると、顧客(地主・オーナー)から、底地や借地・古いアパートなどで、流動性が低く、いわゆる“不良資産”となってしまった不動産の対処について相談を受けるケースがあると思う。例えば、『相続税納付のために物納したいが、物納要件を満たさない物件がある』『賃料滞納などで適切な管理が難しい不動産を所有している』『借地の更新料や各種承諾料の費用を算定することができない』『固定資産税に見合った地代設定ができておらず、値上げ交渉も困難』といったケースだ。そうした案件を当社に紹介してもらう」
「一般的には、解決に手間と時間がかかり敬遠されがちな案件だが、当社にとっては得意分野。案件に応じて、当社が買い取ったり、コンサル業務も受託する。底地の管理も得意だ。もちろん、取引が成立した場合には、手数料を支払う。また、借家人がいる状態の老朽化した建物も、当社が買い取り、明け渡し交渉など権利調整した後は、基本的に仲介会社に売却を依頼している」
― 仲介会社にとってのメリットは。
「一つは顧客の満足度向上。顧客の悩みを解決できるので、その後も良い関係を継続できるのではないか。また、次のビジネスに発展する可能性も見込める。例えば、顧客の悩みの種だった“不良資産”を当社が買い取った場合、その売却益をもとにした新たな収益物件の購入も提案できる。いわゆる資産の組み替え提案だ。加えて、その新たな収益物件の管理業務も請け負うことが出来れば、管理戸数増加につながる」
空き家・木密地対策も
― 今後の事業展開について。
「既存事業である権利調整はニーズがあるので、今後も力を入れていく予定だ。拠点展開については、人材育成の状況を見ながら進めるが、急速に増やすことは考えていない。また、これまで培ってきた権利調整ノウハウを生かして新たな事業も展開したい」
エリアの価値向上視野
― 例えばどのような事業を予定しているのか。
「防災や安全性の面から今、空き家や木造密集地対策が課題となっている。それを解消していくためには、当社が培ってきた権利調整ノウハウが生かせると考える。というのは、昔からの密集市街地は、権利関係が複雑になっていることが多いため、所有者を探し出し、意向を聞きながらまとめていく作業が必要になるからだ。地域の環境整備が進むと、そのエリアの価値向上にもつながる」
「当社の強みは、相手の言葉や思いを的確に理解し、調整する能力を持った人材がいること。一般的に当事者同士(地主や借地権者)は、売却や買い取りの意向を持っていても、これまでの関係性を悪くしたくないため、言えずにいることが多い。そうした時に我々のような第三者が間に入り、意見を調整することで、スムーズな解決に結びつく」
100年企業目指す
「経営ビジョンは、『不動産権利調整の先駆者であり続る』『全てのステークホルダーとウィン・ウィン・ウィンの関係を目指す』。この理念のもと、全社員一丸となって100年企業に向けて邁進していく」
問い合わせ先
株式会社サンセイランディック
東京都千代田区丸の内2-5-1 丸の内二丁目ビル5階
電話番号03-5252-7511(代表)
FAX 03-5252-7512
メールアドレス info@sansei-l.co.jp
所在地: 東京都千代田区丸の内2-5-1
丸の内二丁目ビル5階
免許 国土交通大臣(4)第6282号
加盟団体
一般社団法人全国住宅産業協会
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会
公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会
東京都不動産のれん会
従業員数 124名(平成29年3月末日現在)
事業内容:
- 底地の仕入れ及び企画販売
- 底地の管理
関連会社: 株式会社 One's Lifeホーム
デザイナーズ注文住宅の建築請負(リフォーム・リノベーション事業)
〒154-0004 東京都世田谷区太子堂4-1-1 キャロットタワー14階