リクルートが運営する不動産ポータルサイト「SUUMO」では、8月4日から新築分譲戸建ての竣工前物件を対象に外観や内観をCGで制作・紹介する商品を提供している。分譲住宅の早期販売を支援することで、資金サイクルを早め、クライアントの収益向上への貢献を狙う。9月15日時点で新商品活用の掲載件数は約100物件となる。新商品提供の目的や背景を同社戸建流通請負ディビジョンの辻本陽一・ディビジョン長に聞いた。
新商品は新築分譲戸建ての領域で、CG技術を用いて竣工前物件の外観パースや内観を制作し、ポータルサイト「SUUMO」で紹介するもの。内観はバーチャルステージングを施し、モダンスタイル、コンテンポラリー、北欧インテリアといったコーディネートも行える。売主は竣工前物件の早期掲載により、カスタマー(住宅購入検討者)からの早期受け付けが可能になる。一方、カスタマーは完成予想がしやすくなり、購入検討物件に竣工前物件を含めることができる。
新築分譲戸建ては通常、土地の仕入れから、建築、販売といったサイクルで進み、販売によって投下資金を回収するもの。竣工前物件の早期販売を促すことで、辻本氏は「分譲の回転率を上げたい」と述べる。「SUUMO」の掲載物件では従来、竣工前に成約するのが3割、それを6割まで向上させるのが目標だ。
現状、新築分譲戸建て市場は活況を呈しており、全体的に売れ行きは好調だ。ただ、用地の仕入れが課題として浮上している。売主は営業の生産性を向上させないと、用地仕入れに人員を割けない。辻本氏は「もっと販売のサイクルを早めたいという売主、仲介会社に頼らない自社販売の工務店系の売主からのニーズは高い」と新商品の引き合い状況を説明する。9月15日時点で新商品を活用した掲載件数は約100物件だ。
竣工前の物件をCG技術で紹介するため、売主とカスタマーとの間の情報の非対称性をクリアし、正確な情報提供のために、この1年、社内で校閲の運用を整備し、チェック体制を整えてきた。また、近年はバーチャルリアリティ(VR)に関する技術の進展が格段に進み、カスタマーもVRに対しての理解度は進んだ。新商品提供開始のタイミングはそうした技術の進展も背景にある。
新商品は「SUUMO」のクライアントの収益向上につながるもの。クライアントの広告担当者よりも経営トップが関心を示す。辻本氏は「(新築分譲戸建て市場で)このまま活況が続くとは限らない。工務店や大手も含め、早期に広告を掲載し、早期に成約に導いていかないと、収益が上がらなくなるという危機感を持つお客様からの関心が高い」と述べる。
分譲戸建ては建物が建ってからのほうが売りやすい。また、値引き交渉ができる状態で売りたいと考える仲介会社も少なくない。早く資金回収のめどをつけ、用地の仕入れに向かいたい売主との間に思惑の相違が発生する。新商品は竣工前物件をイメージしやすくし、早期売却ができることを実感することで、「仲介会社と売主会社の二極化している思惑を合一化できるのでは」と辻本氏は展望している。