第208回通常国会が1月17日に開会した。会期は6月15日までの150日間。内閣提出法案の総数は58件。このうち住宅・不動産関連業界への影響が大きい国土交通省関連法案は、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(所有者不明土地法)の一部を改正する法律案」など5件。すべての住宅・建築物の省エネ基準適合を義務付けるための「建築物省エネ法改正案」は〝検討中〟となり、今国会への提出は不透明な状況だ。
提出法案数は今夏の参議院選挙を控え、例年よりも絞り込まれた格好だ。国交省関連では、27年開催予定の国際園芸博覧会の準備・運営や危険な盛土等による災害防止のための法案など5件が提出される。中でも「所有者不明土地法」の改正案は18年の制定時に、施行後3年で必要な措置を講ずるとしており、今後増加が見込まれる不明土地の利用円滑化と管理の適正化を図るため見直す。
具体的には、特定所有不明土地に「朽廃した空き家や工場の建屋等の建築物が存する不明土地」を追加して法適用対象土地を拡大する。更に激甚化・頻発化する自然災害に対応するため、不明土地を公益性の高い施設として活用する「地域福利増進事業」の対象に災害対策関連施設や再エネ発電設備を追加・拡充。同事業の上限期間を現行の10年から20年へ延長すると共に、事業計画書等の縦覧期間を短縮する措置を講ずる。
管理不全状態の不明土地に対する市町村による代執行制度等の創設や、計画策定など推進体制の強化なども盛り込まれる予定だ。「所有者不明土地利用円滑化等推進法人(仮称)」の指定制度創設では、宅地建物取引業者や司法書士といった地域の専門家や、学識経験者を構成員として想定。公的信用力が付与された地域づくりの新たな担い手として、市町村の補完的な役割が期待される。国会への提出予定時期は2月上旬。
なお、政府は「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等(建築物省エネ法)の一部を改正する法律案(仮称)」について今国会での提出を「検討中」とした。住宅・建築物の省エネ性能向上は、政府が進める脱炭素戦略の柱の一つであり、25年度からすべての新築住宅を対象に断熱性能などの省エネ基準を満たすよう義務付ける予定としていた。国交省では、「国会提出に向けた検討を進めている状態であり、見送りではない」としている。事業者体制や消費者の機運を含め、今後の動向に注目が集まる。