政策

社説 若者たちのキャリアアップ 資格取得でプロ意識を磨け

 この春、社会人スタートを切った若者はキャリアをどのように築いていくか胸を膨らませていると思う。住宅・不動産業界は住まいや職場など人の生活に携わる仕事だけに、その重責を感じて臨んでもらいたい。そのためには知識と経験の蓄積が欠かせないが、不動産取引にかかわるならば「宅地建物取引士」は早期に習得すべきであろう。事務所に必要な宅建士の数は従業員の5人に1人以上となっているが、その環境に甘んじずに取引にかかわる全従業員が宅建士資格を持ちプロ集団を全面に押し出して営業する会社もある。

 このプロ意識は今後のキャリア形成に必要だ。その裏付けとなる様々な資格もある。宅建士にとどまらず、不動産鑑定士や土地家屋調査士、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士といった国家資格として位置付けられるものに加えて、各種団体の認定資格などがある。個々のレベルに応じて勉強が始められ、資格取得でスキルアップにつなげられる。

 内面的な能力を外から見えるようにするのが資格の本来の役割である。その人の能力を外から判断しやすくなるため、取引先の会社や一般消費者にも分かりやすい。

 もっと言えば、これからのキャリア形成の中で転職の際に資格を持っていると有利に働く。終身雇用の時代は終わった。能力主義、ジョブ型雇用が主流となる中で資格が十分な武器となる。

 ただ、人事担当者の中には、ランダムになんでもかんでも資格を持っている資格マニアを意外に評価しないこともある。これは実務のための勉強ではなくて資格を取ることを目的とするもので、単なる勉強好きだけでは戦力外と判断されるケースである。もちろん、趣味的に資格を取得することを否定しているわけではない。ワインのソムリエの資格を持っていたことで不動産業界から飲食業界へと転身を図れることもある。

 だが、住宅・不動産業に従事するならば、電機機械や危険物取り扱いなど仕事に関連する資格を取れば生かせるが、例えば調理師や美容師などの資格は不動産ビジネスで重要度を見いだせない。仕事に関連した資格を絞り込みキャリア形成に生かす。中堅不動産の採用担当者は「取得資格を履歴書に羅列すればよいわけではない。そうした人を面談で落としたこともある」と話す。仕事関連の資格でも相応の難度を求めて評価する。

 もっとも、資格を取ればプロかといえばそうではない。高度な知識・技術を習得してもモラルを欠き、社会通念上受け入れられない行動を取ってしまえば、その人の能力を証明する資格に対しての背信行為。監督官庁から行政処分を受けるケースは珍しくない。資格取得はプロとして活躍するスタートにすぎない。知識・技術を証明する資格取得を目指すに当たり、真のプロフェッショナルとは何かに思いをはせる契機にもしてもらいたい。