マンション管理のエキスパート!管理業務主任者
「マンション管理業者」が円滑に業務をこなせるように音頭をとります
マンションには「管理組合」というマンションを管理するための組織があります。
多くの場合、この管理組合の役員はマンションの住人の中から選出されるのが一般的ですが、煩雑な業務が多いこともあり、「できればやりたくない」と思われているのが実情です。
そして、やっと役員が決まって、いざ業務にとりかかろうとしても、予備知識が不足しているために管理運営がうまくいかないケースもあります。
そのため、業務のほとんどを「マンション管理業者」に委託している管理組合も少なくありません。この「マンション管理業者」が円滑に業務をこなせるように音頭をとるのが管理業務主任者です。
また、マンション管理業者側には、管理委託契約を交わしているマンション管理組合の数に応じて一定数の管理業務主任者を設置しなくてはいけないという義務が課せられています。
管理業務主任者の具体的な業務としては、委託された管理業務が適切に行われているかをチェックしたり、その報告を管理組合に行うことなどがあります。
その中でも、管理委託契約に関する重要事項の説明と、その関連書類に記名・押印する業務は管理業務主任者にしか許されていません。
つまり、管理委託業務は管理業務主任者なしでは始まらないといっても、過言ではないくらい重要な役割をもった資格なのです。
マンション管理士と管理業務主任者の違い
「管理業務主任者」と同じく、マンションにかかわる資格として、「マンション管理士」があります。
この二つの資格で大きく違うのは、先にも述べたマンション管理業者に対する設置義務の有無と、独占業務の有無です。
管理業務主任者は、マンション管理業者ごとに一定数の人数を設置する義務があり、重要事項の説明という独占業務を行っています。一方、マンション管理士はこれらの規定はありません。
また、業務に関するスタンスにも違いがあり、マンション管理士は管理組合側に立ちながら業務を行うのに対し、管理業務主任者はマンション管理業者側の立場に立って業務を行うのが一般的です。
管理業務主任者の業務
管理業務主任者の業務の中で、最も大事なものは管理委託契約の際に重要事項の説明を行うことです。
重要事項の説明とは、読んで字のごとく管理委託契約に関して重要と思われることを説明する業務のことです。管理組合(住人)側はマンションの管理運営に詳しくない方も少なくないため、この説明を怠ると「そんなことは聞いていない!」…なんてトラブルにつながりかねません。そのため、契約を交わす際にこのような説明を行う必要があるのです。
また、ごくまれに自分にとって都合の悪い情報をふせたまま契約を結ぼうとする業者がいることもあるため、住民側にとって不利な条件で契約が結ばれることを防ぐために、決まりを作っておくという意味合いもあります。
具体的な説明内容としては、
- 説明をする管理業務主任者の所属するマンション管理業者の名称や住所など
- 契約は新規に結ぶのか更新するのか?
- 対象となるマンションの情報
- 委託される管理事務はどんな内容なのか?
- 金銭の取扱いはどのように行うのか?
- 保証契約の内容はどんなものか?
- 契約の期間はどのくらいか? 更新・解除をする際はどうしたらいいのか?
などがあります。
管理業務主任者は、契約の際これらの説明を必ず行い、関連書類に記名押印をしなくてはいけません(「管理業務主任者たる私が責任をもって説明しました!」という証明をするわけですね)。
また、マンション管理業者は管理業務や管理組合の会計について、一定のタイミングで報告を行う義務を負いますが、この報告についても管理業務主任者が行うよう定められています。
このように、管理業務のプロが契約時にかかわり、その後の業務もしっかりマネジメントしてくれることで、委託する側も委託を受ける側も安心して委託関係を結ぶことができるわけです。
管理業務主任者の活躍の場
現在、日本には約623万戸のマンションがあり、おおよそ1,530万人ほどがマンションで暮らしています。単純に考えれば、10人に1人がマンションに住んでいる計算になります。マンション管理組合の数も相当数あり、最近では管理業務を委託している管理組合も増えてきています。
このような状況から、管理業務主任者のニーズも年々高まりつつあります。
中でも特にニーズが高いのは、やはりマンション管理会社で、現在でも管理業務主任者資格保有者の多くがマンション管理会社に籍を置いて業務をこなしています。
しかし、一口にマンション管理会社といってもそれぞれ特色があり、業務の内容や管理業務主任者に期待される役割などに若干の差異があります。
たとえば不動産会社や建設会社を系列に持つマンション管理会社であれば、規模も大きく、管理しているマンションの数も多いため、ある程度のスケールメリットが期待できます。
管理業務主任者にとっても、働きやすい環境といえるでしょう。
また、特に母体のないマンション管理会社は中~小規模のものが多いものの、大手に負けないよう、顧客(管理組合)のハートをがっちりつかむような業務をウリにしている会社がほとんどですので、まさに管理業務主任者の腕が試される、やりがいのある環境といえるでしょう。
試験日程 (2020年度)
受験申込案内書 | 8月3日(月)~9月30日(水) |
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受付期間 | 9月1日(火)~9月30日(水) |
試験地 | 北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県、沖縄県 |
合格発表 | 2021年1月22日(金) |
受験手数料 | 8,900円 |
※詳しくは試験機関にお問い合わせください。 ※実施団体HPの「管理業務主任者試験」をご覧ください。 03-3500-2720 |
試験データ(2019年度)
受験者数 | 15,591人 |
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合格者数 | 3,617人 |
合格率 | 23.2% |
実施団体 | 一般社団法人 マンション管理業協会本部 03-3500-2720(試験研修部) |
住宅新報からワンポイント
管理業務主任者試験は四肢択一のマークシート形式で、総問題数は50問です。
合格点ラインが、33点~36点です(毎年変動します)ので、全体の7割程度正解できれば合格できるといえます。
合格率は、おおむね20%台で推移しています。
同じく、マンションに関する資格であるマンション管理士の合格率が7%~9%ですので、それに比べると率としては高めといえます。
試験範囲は広いものの、宅建やマンション管理士といった資格試験と範囲が重なる部分が多くあります。そのため、それらの資格をすでに持っている受験生がそのまま管理業務主任者の試験を受けているケースも少なくなく、それらの受験生が合格率を底上げしていると考えられます。
※すでにマンション管理士の資格を持っている場合は、管理業務主任者の試験で5問免除を受けることができます。
勉強法のコツとしてはとにかく合理性に徹することをお勧めします。
毎年重点的に出題される分野の中の、さらに「定番の問題」を押さえたうえで、「法改正にかかわる問題」や、重要論点にもかかわらず「未出題の問題」を押さえておきましょう。
(これらの問題は法律を根拠にしたものが多く、なにが正しくてなにが間違っているのかが比較的理解しやすいためです)
そのうえで、関連する法律の内容を理解していきましょう。
また、受験生の頭を悩ませることが多い設備関係の問題には注意してください。
この分野は、法律だけではなく、非常にマニアックな規定などが出題の根拠とされていることも多く、思考の迷路に迷い込みがちです。加えて出題傾向なども年ごとに変わってきますので、いわゆる難問に遭遇しやすい分野でもあります。
そのため、あまり深いことを気にしすぎないことが肝要です。1,2問程度の難問対策に延々時間を割くよりも、基本的な知識の取得に注力した方が、得点に結びつきやすくなります。