登記情報を活用せよ

<第5回>マーケティング機能

【取材協力】
株式会社 JON 取締役営業本部長
眞木 仁(さなぎ じん)氏

眞木 仁(さなぎ じん)氏

株式会社 JON

株式会社 JON

行政情報を有効活用することの社会的気運が高まるなか、各種データベースの汎用型候補キーとなり得る「所在地番」および「住所」の全国レベルにおける調査体制を確立したほか、不動産登記にかかる高度かつクリーンな分析を可能とする「登記基本情報データベース」の開発に成功するなど、数々のユニークな実績を生み出している。
これらの成果が諸方面に導入されることで、不動産にかかる権利の明確化や取引の安全はもちろんのこと、社会生活における様々な利便や安心につながるものと確信し、さらに新たな事業・サービスの提供に努めている。

・不動産インデックス


 

<第6回>ビジネス上の優位性

<第5回>マーケティング機能

<第4回>より効率的な使い方

<第3回>「相続」に高まる期待

<第2回>欲しい内容を抽出する

<第1回>ビジネスのチャンスに

高まる営業提案力

 登記情報は、不動産会社にとって便利な営業ツールとして大きな役割を果たすと共に、登記原因や結果を「読み解く」ことで、マーケティングとしての活用が可能になることを前回のリポートで報告した。「この登記はどのような意味を持つのか」といったことを読み解く作業により、営業提案の幅や説得力が増すことになる。

 差押えの物件(登記)が、最終的に競売となるのか任意売却(任売)になるのかといったことも「読み解き」の一例。任売は通常売買と結果的には同様なので、市場の需要に十分対応できたととらえることができる。一方の競売は、通常売買が成立しなかった「不人気」物件。ある地域で売却依頼を受けた際、そのエリアで競売が多いか任売が多いかを調べる(読み解く)ことで、価格設定の提案が変わることになる。競売が多い時は「人気が低いエリアの可能性あり」として価格を低く設定、任売が多い時はその逆を提案できる。不動産登記情報コンサル会社JONの眞木仁取締役営業本部長は、「客観的情報に基づく、しっかりとした提案ができるはず」と話す。

 また、自社の出店計画や人員配置を決める際の活用も可能だ。同じ1万世帯があるA、B、C3つのエリアのうち、どの地域を事業拡大の重点エリアとするか。各エリアの10年間の抵当権設定登記の数を調べ、次の抵当権設定登記(中古売買)の山がくるとされる「7年後」がどのエリアに多いか。導き出したそのエリアを「需要の顕在化が高い」として、重点的な営業拠点に設定できる。(第4回記事参照)

 そのほか、国土交通省が提供する「不動産取引価格情報」との併用で、登記情報にある物件の想定取引価格を導き出すことも可能だ。すべてできるというわけではないが、敷地規模の符合などによりそれを導き、周辺住民に対する「売却依頼獲得営業」の武器の一つとして活用できる。

視覚的認識を高める

 地図上に地番を配し、登記情報から得られた相続や売買、差押えの事実を「マッピング」作業により落とし込むことで視覚的認識が高まる。そしてこれは、家屋番号を把握していれば分譲マンションの世界でも当然可能で、視覚的認識を「面」から「立体化」することができる。特にマンションの場合は戸建てよりも流通スピードが早いケースが多いため、視覚的認識を物件ごとに構築することで様々な営業戦略を立てやすくなる。また、JONではマンション(区分所有建物)の家屋番号を断片的ではなく、網羅的に保有しているため、立体化した後、同じような条件下のマンションのみを集めてマーケティングすることも可能である。

 
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 JONの眞木氏は、「登記の移動情報をベースに、様々な流通研究ができる時代に入った」と語る。登記情報をいかに活用するかは、今後の不動産会社にとって一つの大きなテーマになりそうだ。