全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)
全宅連は、都道府県の区域を単位とした47の宅地建物取引業協会(宅建協会)を会員としています。これらの会員に所属する構成員(宅建協会の会員である宅地建物取引事業者)は、約10万社であり、不動産業界における名実ともに最大の団体を構成しています。会員所属構成員の多くが中小不動産事業者で、全国的結束によって相互協力の成果をあげています。
■受講の流れ
4月から宅地建物取引主任者の名称が「宅地建物取引士」へと変更されるが、「士」が付く資格となるだけに、業界全体の活性化、そして一般消費者の期待も高まりを見せている。同時に、業界全体に対して「厳しい目」が向けられることにもなる。「信用・信頼の向上」は産業が成長・発展していく上で必要不可欠なこと。不動産業界もその取り組みに注力しているが、全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連、伊藤博会長)が独自展開する資格「不動産キャリアパーソン」もそのうちの一つだ。アンケートによる一般消費者の「声」を基に、「実務能力の向上が大きな特徴」とされる同資格の魅力に迫った。
住宅新報社・消費者アンケート 「信頼」の不足分、学習でカバーを
住宅新報社が、過去3年以内に引っ越しを行い、不動産会社を複数回利用した経験のある一般消費者500人(全国各地の20代~60代の各年代100人ずつ)を対象に実施した「不動産会社に関するアンケート調査」(調査日=1月29~30日)によると、不動産会社に対する信用、信頼度の平均値は65.34%という結果となった。不動産会社のイメージについては、以前と比べて「改善された」と答えた割合が「悪化」よりも大幅に多い結果だったが、65.34%以外の約35%をいかに小さくし、信頼度を100%に近づけていくかが、業界に課せられた今後の課題であるようだ。
信用・信頼が断トツ
また、今回の調査では、消費者が不動産会社に求めることとして、「アフターフォロー」「接客応対」「基本的マナー」といった事項を重視していることも分かった。
「不動産会社に求めること」について、選択式で最も重視する項目を1つだけ選んでもらった結果では、35.0%の割合で「信用・信頼感」がトップ、2位が「親切・丁寧な対応」で20.8%、3位が「充実したアフターフォロー」(20.0%)だった。
なお、一般消費者が最も不動産会社に求めている「信用・信頼度」について、「それを下げてしまう不動産会社の行いは何か」を聞いたところ(複数選択可)、「契約後のアフターフォローが疎かになる」が最も多く62.0%、次いで「売り上げ(契約)を重視した接客応対」(61.4%)、「基本的なマナーがなっていない」(50.2%)、「専門(不動産)知識が不足している」(44.4%)などという順となった。
フォローも重要視
なお、アンケート結果を見ると、「信用・信頼」と同様に、一般消費者が不動産会社に対して「充実したアフターフォロー」を強く求めていることが分かる。全宅連では、同会が掲げるビジョンで「地域に寄り添い、生活サポートのパートナーになる」としており、アフターフォローの必要性を全面的に押し出している。
また、取引実務の基礎のほか、倫理・コンプライアンスを含めた内容を学ぶ「不動産キャリアパーソン」は、全宅連が2年前から立ち上げている独自資格だ。現在1万4000人を超える申し込みがある。同資格の学習内容は、消費者が不動産会社に求める資質を網羅するものであることから、同会では不動産業に携わる全従業者に、同資格の受講を普及していく考えだ。
「実務」を学ぶ内容 資格コンサルタント・高島徹治
〝仕事人〟に必須なアイテム満載
よく「理論」と「現実」ということが言われる。「確かに理屈はそうなのだけれど、実際には理論通りにはいかない」。こういう体験を、何度となく経験した人は少なくないはずだ。
不動産関係者の登龍門である宅地建物取引士試験は、主としてこの「理論」(中でも法律)を対象とする試験。世の中のどんな分野であれ、理論はすべての基礎である。これがあってこそ、その上に応用分野が成り立つのだ。だから、不動産分野では、宅建試験で問われる知識は必須の知識となる。
だが一方、それだけで不動産取引がすべてうまくいくかとなると、そうもいかない。なぜなら、現実のビジネスの多くは、理論を発展させた応用分野で展開されるからだ。いわゆる「実務」である。
ここで紹介されている「不動産キャリアパーソン」は、実務面を深く掘り下げた内容になっている。例えば、不動産取引で絶対に欠かせない実務は価格査定であり、そのためには的確な物件調査が必要だ。また、お客様にとっての大問題は資金計画であり、上手な住宅ローンの活用だ。
売る側の宅地建物取引業者は、的確な価格査定をしなければ適正な取引は成立しないし、購入時点では、お客様の事情に合わせた最適のローンを紹介すれば感謝され、他の顧客の紹介につながったりもする。
こうしたことは、不動産取引実務の上では、極めて重要なアイテムである。ところが、宅地建物取引士では、これらのことはほとんど問われない。それは、これらが法律上の規定とはなじまないことや、試験が業界関係者以外にも広く門戸を開放している等の事情によるだろう。
そこで、業界関係者が応用分野である実務をおさめるには、別な勉強が必要になる。いわば宅建試験の内容は最初の基礎であり、「不動産キャリアパーソン」は本当の〝仕事人〟に必須なアイテムを学ぶ応用学習であるとも言えるだろう。
なお、筆者が感心したのは、試験の前段階である講座において、その第1編に、「従業者としての大切な心構え」として、社会的使命と役割、顧客対応の基本、クレーム・トラブルへの対応などが置かれていることである。ここでは、ソーシャル・マーケティングの視点から不動産業を位置付け、従業者に〝一社会人〟としてどのようなマナー、スキルが求められるかを説いている。これらは、他の資格取得の勉強では学べないものだけに、この講座ならではの特色になっている。
たかしま・てつじ=1937年生まれ、早稲田大学政経学部中退後、週刊誌記者、出版社社長などを経て、能力開発コンサルタント、資格コンサルタントとして活躍。90年から取得した資格は90を超える。著書は『すごい「勉強法」』(三笠書房知的生きかた文庫)、『40歳からは「この資格」を取りなさい』(中公新書ラクレ)など50冊を超える。
次のページでは、国土交通省土地・建設産業局 局長毛利信二氏の語るキャリアパーソンへの期待、そして、受講者が語る、資格の魅力を紹介します。