2016年9月に日本に上陸、勢力を伸ばしている「Uber Eats」。これまでも個別の店舗が直接出前をする仕組みはもちろん、デリバリー代行は行わないものの1万3000軒以上が加盟する「出前館」等、出前事業を行う会社は存在していた。
だが、スマホの普及によってデリバリーのサービスが進化、WEB上でメニューを確認、注文できるようになったこと、到着までの時間が分かりやすくなったことなどから、この3年ほどで市場規模は確実に拡大してきている。
外食・中食市場情報サービス『CREST®』を提供するエヌピーディー・ジャパン株式会社が2019年4月10日に公表した外食・中食の出前市場動向分析レポートによると2018年の外食・中食における出前市場規模は4084億円で前年と比べて5.9%成長した。
2016年は5.8%、2017年は2.3%とぞれぞれ増加しており、外食・中食市場全体の成長率2%前後と比較しても高い成長となっている。
■出前市場の拡大に伴い台頭するゴーストレストラン
さて、出前市場の拡大に伴い、不動産とビジネスの関係にも新たな展開が出てきた。ひとつは店舗を持たないレストラン、ゴーストレストランである。これまでの出前は主にリアルに店舗を持つ飲食店が応じていたが、飲食店出店には1000万円以上と費用が嵩む。出前である程度稼げるなら、リアル店舗は要らないと考える人が出てきているのだ。
飲食業は利益率の低さ、出店時のコストが大きく、新規参入も多いものの廃業も多い業種である。新規開業店舗の約3割が1年未満で廃業するとすら言われているほどだ。だが、ゴーストレストランなら開業にかかる費用を大きく節約できるのはもちろん、固定費として毎月かかる賃料や光熱費なども抑えられる。また、接客の必要がないので人件費も落とせる。
不動産目線で面白いのはリアル店舗の場合には人通りが多い、視認性が高いなど立地にこだわる必要があるが、ゴーストレストランで調理場だけを求めるのなら、その点へのこだわりは不要という点だ。
■さらに進化したクラウドキッチンも誕生
そして、このゴーストレストランが次に生んだのがクラウドキッチンである。業務目的のシェアキッチンといえば分かりやすいだろうか。複数の店舗が同じ店舗を時間によって使い分けるというものである。
「Uber Eats」の本家本元、レストランテックの進むアメリカではこの動きが進んでいる。2019年年末にUberのCEOだったトラヴィス・カラニック氏が同社を退いたことを伝えるニュースは同氏が「City Storage Systems」というスタートアップ企業に1億5000万ドル(約163億円)を投資したと発表している。
この会社は遊休不動産をゴーストレストランの調理スペースなどに活用するなど、新しい産業のために利活用する事業に特化しており、月額制で設備を貸し出す「CloudKitchens」も所有。使われていない不動産と新しく勃興する産業で使おうというわけである。
アメリカだけではない。「Uber Eats」同様、大きく躍進しているのはロンドンを拠点に出前サービスを提供する「Deliveroo」。仕組みはほぼ「Uber Eats」と変わらないが、注目すべきは自身で運営するシェアキッチンとロンドン、パリに持っていること。そして、もうひとつ、注目すべきはそこにAmazonが投資していること。同社が将来性を感じているというならと考える人も少なくないはずだ。
当然、日本でも同様の動きが始まりつつある。2019年にはオンラインデリバリーに特化した飲食店(≒ゴーストレストラン)向けシェアキッチン「Kitchen BASE(キッチンベース)」が東京の中目黒エリアにオープン。目新しいこともあって、あちこちの媒体が取材に訪れている。
場所貸し大手の「スペースマーケット」でも「東京都でゴーストレストランを開業できる飲食業許可取得済みスペースまとめ」として575カ所を紹介している。こうした場所を借りれば今すぐ、デリバリー専門飲食店としてオープンできるというわけだ。
■新型コロナウィルス騒動が追い風になる可能性も
これまでのシェアキッチンはどちらかと言えば郊外でいずれは起業したいと考える主婦をメインターゲットとしており、行政が主導する創業支援などの一環で比較的緩い雰囲気が中心だった。だが、上記のキッチンにはそんなほんわかしたものではない。新しいビジネスチャンスを掴もうという意欲的な人たちが参入している。
このところの新型コロナウィルス騒動で出前が伸びているという報道もある。今後、新たな場の使い方として、成長するかもしれない。
(参照:アマゾンも出資?!出前サービスが急成長。キッチンのみのゴーストレストランにニーズが)
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