問題
【問 21】 Aが、自己所有の甲建物をBに賃貸している場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Bの賃料を弁済するについて正当な利益を有しない第三者は、Bの意思に反して弁済したが、Bの意思に反することをAが知らなかったときは、有効な弁済となる。
2 Bの賃料を弁済するについて正当な利益を有しない第三者は、Bの委託を受けていないのに、Aの意思に反して賃料を第三者弁済することはできない。
3 Aの預金口座に対する払込みによってする弁済は、Aがその預金に係る債権の債務者である銀行に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる。
4 Aが、あらかじめ受領を拒んでいたときは、Bは、口頭の提供をすることなく、直ちに供託することができる。
【問 22】 定期建物賃貸借に関する次の記述のうち、借地借家法及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 存続期間5年の定期建物賃貸借契約を締結した場合には、事前に終了時期を通知しなくても、5年経過をもって当然に、賃貸人は賃借人に対して、期間満了による終了を対抗することができる。
2 Aは、自己所有の甲建物についてBとの間で定期建物賃貸借契約を締結した。賃料改定に関する特約がない場合、経済事情の変動により賃料が不相当となったときは、AはBに対し、賃料増額請求をすることができる。
3 Aは、自己所有の甲建物(延べ面積200m2未満)を居住目的でBとの間で定期建物賃貸借契約を締結した。Bが転勤などのやむを得ない事情で生活の本拠として使用することが困難となったのであれば、Aは、Bに対し、解約を申し入れ、申入れの日から1月を経過することによって、契約を終了させることができる。
4 定期建物賃貸借契約の保証人は、定期建物賃貸借契約が期間満了後に再契約された場合、引き続き、保証債務を負担する旨を口頭で承諾したときは、再契約後の債務について保証債務を負う。
【問 23】 賃貸物件の滅失、解除及び原状回復に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 賃借物の一部が賃借人の責めに帰することができない事由により滅失し、使用及び収益をすることができなくなったときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
2 賃借物である建物が滅失した場合には、賃貸借は終了するが、賃借人の責めに帰すべき事由により滅失した場合には、終了しない。
3 賃貸借契約が解除された場合には、当該賃貸借契約は、契約成立時にさかのぼって無効となる。
4 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負わない。
【問 24】 高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づく終身建物賃貸借契約に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 終身建物賃貸借契約は、公正証書で締結する必要がある。
2 終身建物賃貸借契約は、賃借人の死亡に至るまで存続し、かつ、賃借人が死亡した時に終了する。
3 終身建物賃貸借契約を締結する賃借人は60歳以上でなければならず、また、同居することができる親族も60歳以上(賃借人の配偶者を除く。)でなければならない。
4 終身建物賃貸借契約は、権利金その他の借家権の設定の対価を受領しないものであることが必要である。
【問 25】 破産と賃貸借に関する次の記述のうち、破産法及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 借主につき破産手続開始の決定がなされると、同時に破産管財人が選任されるが、借主の破産管財人が、賃料を支払い、貸主との関係における催告・解除等の通知の相手方となる。
2 借主につき破産手続の開始が決定され、破産管財人が選任された場合、破産管財人は、賃貸借契約の解除又は履行を選択することができるが、破産管財人がいずれを選択するか態度を示さない場合、貸主である相手方は、破産管財人に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか、又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる
3 貸主の個人根保証人に対し、破産手続の開始が決定されても、個人根保証契約の主たる債務の元本は確定しない。
4 借主につき破産手続の開始が決定されると、破産手続開始前に生じた未払賃料債権は、破産債権となる。
正解と解説
【問 21】 正 解 4
1 正しい。弁済をするについて正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない(民法474条2項)。ただし書きの部分が令和2年の改正点である。
2 正しい。弁済するについて正当な利益を有しない三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない(同条3項)。本肢は、令和2年の改正点である。
3 正しい。債権者の預金口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金に係る債権の債務者(銀行)に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる(同法477条)。具体的にいうと、入金記帳されたときに弁済として効力を生じる。本肢は令和2年の改正点である。
4 誤りで、正解。債権者があらかじめ受領を拒んでいる場合でも、弁済者は原則として、弁済の提供(口頭の提供)をしなければ供託することができない(同法494条1項1号)。
【問 22】 正 解 2
1 誤り。定期建物賃貸借の存続期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない(借地借家法38条4項)。
2 正しく、正解。経済事情の変動により賃料が不相当となったときで、賃料の改定特約がない場合には、賃料の増減請求をすることができる(同条7項)。
3 誤り。延べ面積200m2未満の建物を居住目的で定期建物賃貸借契約を締結したが、借家人Bが転勤などのやむを得ない事情で生活の本拠として使用することが困難となったときは、借家人Bに中途解約権が生じる(同条5項)。Aには中途解約権は生じない。
4 誤り。保証契約は書面でしないと効力を生じないので、再契約をした定期建物賃貸借のために書面で新たに保証契約を締結する必要がある(民法446条2項)。
【問 23】 正 解 4
1 誤り。賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される(民法611条1項)。滅失した割合に応じて当然減額されるのであって、減額請求することができるのではない。令和2年の法改正点である。
2 誤り。賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。当事者の一方に帰責事由があるか否かに関係なく、目的物が消滅したのであるから、契約を存続させても意味がないので終了することになる。後は、損害賠償が問題となるだけである(同法616条の2)。令和2年の法改正点である。
3 誤り。賃貸借契約が解除された場合には、当該賃貸借契約は、契約成立時にさかのぼって無効となるのではなく、解除した時から将来に向かってのみ無効となる(同法620条)。解除前の契約関係は有効のままである。
4 正しく、正解。賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない(同法621条)。
【問 24】 正 解 1
1 誤りで、正解。終身建物賃貸借契約は、必ずしも公正証書で締結する必要はなく、書面であればよい(高齢者の居住の安定確保に関する法律54条2号)。
2 正しい。終身建物賃貸借契約は、賃借人の死亡に至るまで存続し、かつ、賃借人が死亡した時に終了する(同法52条)。借主の地位が相続されることはない。
3 正しい。終身賃貸事業者と終身建物賃貸借契約を締結する場合における賃借人は60歳以上でなければならず、かつ、同居することができる親族も60歳以上でなければならない。ただし、賃借人と同居する配偶者は60歳以上でなくてもよい(同法52条)。
4 正しい。終身建物賃貸借の条件は、権利金その他の借家権の設定の対価を受領しないものであることその他国土交通省令で定める基準に従い適正に定められるものであることが必要である(同法54条4号)。
【問 25】 正 解 3
1 正しい。借主につき破産手続開始の決定がなされると、同時に破産管財人が選任されるが(破産法31条1項)、破産管財人は、賃料関係の権利義務の主体となり、借主の破産管財人が、賃料を支払い、貸主との関係における催告・解除等の通知の相手方となる(同法2条12項)。
2 正しい。記述の通りである。なお、本肢の場合、破産管財人がその期間内に確答をしないときは、契約の解除をしたものとみなされる(同法53条2項)。
3 誤りで、正解。借主の個人根保証人に対し、破産手続の開始が決定されると、個人根保証契約の主たる債務の元本は確定する(民法465条の4第1項2号)。
4 正しい。借主につき破産手続の開始が決定されると、破産手続開始前に生じた未払賃料債権は、破産債権となる。「破産債権」とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に該当しないものをいう(破産法2条5項)。