京都市は、空き家やセカンドハウスなどに対して課税する新税導入を検討している。京都市は市街地面積が限られており、富裕層がセカンドハウスとしてマンションを購入すると、住宅の価格が高止まりし、市内に居住を希望する若者や子育て世帯が住宅を買えず、市外へ流出していることを指摘している。
セカンドハウスや別荘を購入する富裕層は、別の場所に住み、住民票が京都市にないケースが多い一方、ゴミ処理や上下水道といった公共サービスを享受しており、それに見合ったコストを負担していないと指摘。富裕層であれば税金の負担能力に問題はないのだから、長く住民税を払ってくれる若年層を流出させたコストを負担してほしいと市が考えるのも当然だろう。
今回の新税導入に関しては、空き家問題でこれまで触れられてこなかった論点が2つ浮かび上がる。1つは空き家がセカンドハウスなどとして活用されても、場合によっては地域の負担になるという点、もう1つは若年層の流入を妨げるという点だ。
これまで空き家の問題は、そのまま放置されることで老朽化による倒壊や火災の発生、犯罪の誘発、ゴミの不法投棄、ねずみやゴキブリの発生など衛生面や景観の悪化といった周辺への悪影響が論点として着目されてきた。そのため、危険な空き家の早期の除却や、老朽化させないために空き家の利活用が考えられてきた。京都市の事例は、空き家が利活用されていても、地域を支えるコストを誰が負担するのかという問題が残ることを示唆している。
更に、外国人などの富裕層のセカンドハウスや別荘購入が若年層の流入を妨げるという論点は、住宅価格上昇がもたらした新たな負の側面だ。市が新税による負担を求める理由として、居住しない住宅の存在が潜在的な住宅供給の可能性を狭めているとしている。富裕層が住宅を購入するエリアは〝地位(じぐらい)〟が高いエリアであり、本来であれば歓迎されることだろう。居住の実態がないことを理由に課税すれば、富裕層の離反を招き、住宅価格の下落を招くが、京都市はむしろそれを望んで新税導入を検討している。
外国人にも人気が高く、景観規制が厳しい京都という土地の特性はあるものの、定住を伴わないセカンドハウスや別荘を、迷惑な空き家と同様に扱うのは議論が分かれるところだろう。少子高齢化社会において、財政が苦しい中では、富裕層よりも定住してくれる若年層の住民のほうが大事だという自治体の考えも一理ある。
一方で、不動産取引の妨げになるのではとの懸念の声があるのも確かだ。今回の新税が成立するのかは現時点では分からないが、今後のまちづくりや空き家問題の複雑さを示す事例として、より深い議論が必要だ。