国土交通省は10月16日、マンション管理適正化シンポジウムをオンライン開催した。今年4月に改正マンション管理適正化法が全面施行され、マンション管理計画認定制度や地方公共団体による管理組合への助言・指導制度が創設されるなど、新たな局面を迎えたマンションの適正管理を推進するためのイベントだ。冒頭、開会のメッセージを寄せた豊田俊郎国土交通副大臣は国交省として初めてマンション管理をクローズアップしたイベントと紹介し、マンションの高経年化と居住者の高齢化という〝2つの老い〟に対する適切なメンテナンスの重要性を示した。
講演では地方公共団体の先進事例として門川大作京都市長が「歴史と景観の調和」の観点から進める施策を紹介。藤本正人所沢市長はベッドタウンとしてのマンション管理の必要性を示し、分譲事業者に修繕積立金額案などの事前届け出を義務付ける独自の条例などについて紹介した。
国交省の矢吹周平住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)は、全国のマンションストック約685万戸のうち国民の1割超が居住していること、また毎年およそ10万戸のペースで増加しているとの規模感を示し、「築40年以上の高経年マンションは115万戸あり、10年後に倍増、20年後には約4倍となる試算。長期修繕計画および修繕積立金の見直しが重要」と述べた。また、管理不全マンションの増加が行政代執行による除却など財政負担となる点やマンション建替え手法の現実的課題を挙げ、22年度よりスタートした管理計画認定制度と自治体のコミットメント強化について言及。23年度予算概算要求や適切な大規模修繕を促す税制度の創設に向けた取り組みを明かし、「今後の政策は管理・修繕をしっかりやり、マンションのライフサイクルを回すことが大切。関係するプレーヤーがマンションの長寿命化に向けて取り組むことが重要」と結んだ。
〝健康診断〟の活用も
後半は齊藤広子横浜市立大学教授をコーディネーターに迎え、新時代を迎えたマンション管理のあり方についてパネルディスカッションが行われた。管理計画認定制度の第1号案件となった高島平ハイツマンション(東京都板橋区)の篠原満管理組合前理事長は、「築48年、95戸のマンションでこれまで自主管理をしてきた。取り組みの正当性を確認するため認定申請に至った」と説明。今年度の総会ではマンションを80年間使うとの合意形成を図り、将来の解体費用も見据えた修繕積立金の徴取方法を進めていると報告した。
名古屋市住宅都市局は市と住宅金融支援機構、住宅供給公社など5者によるマンション管理適正化連携協定について紹介したほか、日本マンション管理士会連合会の瀬下義浩会長は適正管理に関する電話相談の増加状況を報告。マンション管理業協会の広畑義久専務理事は、同協会が立ち上げたマンション管理適正評価制度の現状に触れ、「全国対応の制度で毎年実施するのが特徴。毎年の健康診断としてチェック、改善を行い、自治体が進める管理計画認定を目指す方法としても活用を」と呼び掛けた。
矢吹参事官は様々な取り組みや意見を踏まえ、「築年数を重ねても認定や評価が取れている。資産価値とは別に、住みやすい環境づくりがなされている証左であり、この事例の分析は必要。併せて、管理が進んでいない管理組合に何を示していくべきかの検討も重要」と述べた。