古都・京都の中心にある京都御所の北側に、閑静な住宅街がある。その一角に昨年竣工した「ジオ京都御所北」(写真)が、22年のグッドデザイン賞を受賞した。阪急阪神不動産のマンションブランド<ジオ>においては、6年連続通算15案件目の受賞となる。
――京都御所の北側という立地について。
「周辺は御所のほかにも鴨川や寺社仏閣など、多くの人がイメージする京都らしさにあふれた立地で、学校や住宅に囲まれた閑静な住宅街。そこに暮らす人はもちろん、通りを歩く人にも『心地よい』と思ってもらえるデザインにしたいと考えた。京都らしさをテーマに、寺社建築など参照し、京都建築の要素を取り込むことでこのまちならではのデザインを追求した。具体的には、五重塔などに見られる〝重なり〟、路地が奥に続いていくような〝奥行き〟などを取り入れた」
――工夫したポイントは。
「奥行きのある庇形状の実現のため開口上部に出てくる大きな梁の存在が課題だった。そこで東面には逆張構造を採用して、一部のバルコニーの手すりと構造体を兼ねさせ、最上階は勾配パラペットに構造体を埋め込んで処理した。これにより、上部に梁のない大きな開口部と、フラットな軒裏が実現。特に5階からは、大文字焼きや美しい京都の街並みが大開口で堪能できる。軒裏には家の明かりが間接照明のように映し出され、京都建築ならではの奥行き感を演出する。また、通りに面した東側には重なるように庇を設け、寺社建築と呼応するデザインとした」
――共用部について。
「エリアの特徴として、〝辻子(ずし)〟と呼ばれる細い路地がある。エントランスアプローチは路地をイメージし、細い道の先に入口を設けた。エントランスホールには壁面に大きなアートを置いたが、これも十字に重なるパネルの組み合わせで辻子を表現。ホール内は間接照明だけを用い、限られた天井高でも広がりが感じられる空間とした。また、通り沿いには京都御所にあるのと同じ樹種を主とした植栽を配置して、建物の圧迫感を和らげている」
――マンションのデザインに対するこだわりは。
「自分の場合、物件を担当する際は必ずその街についてよく勉強するようにしている。当社のマンションには、いわゆる〝デザイン・コード〟がない。ブランドとしての個性よりも、住人が感じる快適さ、通りや街、周辺環境に与える影響を考慮したデザインにこだわっている」
■ジオ京都御所北 21年6月竣工。京阪鴨東線「出町柳」駅から徒歩約10分で、地上5階建て総戸数18戸。