ど素人から金持ち大家さんになった人々

第23回 「毎月40万円持ち出し」の空室地獄からリカバリーした方法

アンロック伏見さんのプロフィール
197X年東京都生まれ。大学卒業後、SEとなる。若くしてセミリタイアした投資家の影響を受け、2014年に不動産投資を開始するも、毎月40万円の持ち出しに。その後、経営を立て直し、新たに2棟を購入。2015年に会社員を卒業し、起業。現在は自身の失敗経験を生かしたセミナー講師や、外国人向け賃貸サービスの仕事にやりがいを感じる日々を送る。

一棟目の物件で毎月40万円の持ち出しが7カ月続く

――自己紹介をお願いします。

アンロック伏見さん 
不動産起業家のアンロック伏見です。地方の国立大学を卒業後、IT業界で働いてきましたが、2014年に不動産投資を始め、2015年の夏に脱サラ・起業しました。

所有物件は3棟88室で、キャッシュフローは約600万円です。今は不動産賃貸業のかたわら、特に地方に住む外国人の方が快適に暮らせる環境を作るための活動をしています。

アンロックというのは、IT用語で制限されていたものを開放する、本来の持ち味を引き出す、というような意味があります。僕も不動産の持つ価値を引き出したいと思い、この名前を名乗っています。

――不動産投資に出会ったきっかけを教えてください。

アンロック伏見さん 
2年前、会社の組織が急拡大して、それまでのような裁量を持った仕事がしづらくなってきたと感じていました。将来のことを考える中で参加した金融セミナーで、33才でセミリタイアしたという人に出会い、その生き方に魅かれました。

その男性は賃料収入を得ながら世界一周旅行をしたり、シェアワークスペースを運用したりしていたのですが、とっても楽しそうで、「こういう生き方もあるのか・・・」と刺激を受けたんです。

親族が投資で損失を出したことがあるので、最初は慎重でしたが、結局、自分なりに勉強して、行動を始めることにしました。ただ、これまでには「やらなきゃよかった」と思うこともありました・・・。

――予想外のトラブルなどがあったのでしょうか?

アンロック伏見さん 
実は、1棟目に買った宇都宮の1K×58戸のマンションで空室が埋まらず、毎月40万円の持ち出しになってしまったんです。

有名な不動産投資コンサルタントに紹介された業者さん経由で購入したもので、価格は2億1,500万円。利回りは11.6%で、S銀行のフルローンを受けました。金利は4・5%、期間は30年です。

――1棟目にしてはハードなスペックのように感じますが、仲間の大家さんなどに相談はしなかったのでしょうか?

アンロック伏見さん 
このコンサルタントは複数の初心者を指導しているんですが、グル方式というか、横のつながりを作りづらい仕組みなんです。1対1で話していると、何を言われても「そういうものか」と思ってしまいました。かといって、投資判断は自己責任なので、その人のせいとは思っていません。

利回りが10%以上でフルローンがつく物件が貴重だったので、僕自身「欲しい」という気持ちが「危ないかも」という気持ちを上回ったんです。入居率は半分で、購入後の持ち出しも予想できましたが、「すぐに満室にすれば、プラスになるからいいや」と考えていました。

募集条件とマイソクを見直して、12室の空室を1カ月で埋める

――40万円の持ち出しを続けていたときは、どんな気持ちでしたか?

アンロック伏見さん 
年収は1,000万円もなかったので、当時はかなりきつかったです。売買に関わった業者から紹介された管理会社に「どうすれば埋まりますか」と訊いても、「あのエリアでがんばっても満室は無理」という返事。貯金がどんどん減っていきました。

でも、管理会社を変更して、入居時にかかる初期費用を下げ、自作のマイソク持参で営業に行った結果、自分で動く前には21室空室だったのが、1カ月で最大12室埋めることができ、その数カ月後には満室にできたんです。

自分で動き始めると、動いた分だけ成果が出て嬉しかったですね。一時期はかなり落ち込んでいましたが、入居が決まるたびに、自分の気持ちも上向いていきました。

――1カ月で12室埋めた方法について、詳しく教えてもらえますか?

アンロック伏見さん 
一言でいうと、IT業界で得た知識を応用しました。当初は敷金・礼金が各1カ月、フリーレントが1カ月、ADを3カ月に設定していたのですが、これをやめて、入居初期費用5万円、家賃3,000円アップ、AD2カ月、フリーレントなしに変更しました。

初期費用を抑えるというのは、携帯電話の売り方と同じです。マーケティングの世界では、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の4Pが大切と教わりますが、この中でもすぐ変えられて、効果が高いのが価格です。

賃貸業で価格というとまず「家賃」を思い浮かべますが、入居者から見ると初期費用もかなり重要です。引越し代など、何かと物入りですから。その次に触りやすいのがプロモーションで、これが例えば「客付け会社さんへの営業」に当たります。こちらも自分でできることを実践しました。

――満室になったときは、どんな気持ちでしたか?

アンロック伏見さん 
「行動の効果は後から急にやってくる」というのは本当だな、と思いました。これは僕の師匠の一人から教えてもらったことなのですが、一つの行動の効果が現れる場合、一定の時間が経ってから一気に結果に現れることが多いんですよね。

僕の場合も、行動を開始してからしばらく経った頃に動きがあり、入居閑散期の1カ月で12室がバババッと決まりました。持ち出しがなくなり、収支がプラスになったときはホッとしました。

利回り10%台、金利4・5%、フルローンはかなり危ない

――1棟目の購入について、今、振り返ってみてどう思いますか?

アンロック伏見さん 
甘かったです。今は、利回り11%以下、金利4・5%でフルローンという借り方は、かなり危ないという印象を持っています。オーバーローンは言わずもがなですね。最近は、人の相談を受ける機会が多いのですが、僕と同じような人がたくさんいるので心配しています。

例えば、「家賃保証をつける」という言葉に誘われて、9割埋まってトントンという物件を買った人。満室にしても赤字という人もいます。その人は、レントロール上の想定家賃を鵜呑みにして購入し、その水準で融資もついたのに、実際の適正家賃は想定家賃より2割も安かったんです。

あとは、新築の区分マンションを購入して最初から収支がマイナスな人。その他に、購入直後の大規模修繕工事が進まず、最初から毎月30万円のマイナスという人も知っています。

――それでは何のために不動産投資を始めたのか、わからなくなってしまいますね。

アンロック伏見さん 
長く業界にいる人たちに話を聞くと、最初から数十万円も持ち出しという人が増えているのは、ここ1~2年の現象だといいます。僕も他人事ではないのですが、どうも「属性がよくて、人もいい」というのが、この手の物件を買ってしまう人の特徴のようです。

この先は、例えばフリーレントを数カ月付けて家賃を上げ、仲介会社さんに高い広告費を払って無理やり入居付けを行い、見せかけの利回りを高くしてから、買主よりも自社の利益を優先する仲介業者さんを見つけて売り切るという以外に、出口はないでしょう。売れたとしても、いい気分ではないですよね・・・。

利回りの高い物件からのCFで1棟目のリスクをカバー

――よく、不動産投資はババ抜きといいますが、今まさに、そういう物件が市場に並んでいるわけですね。物件を紹介したコンサルタントさんには、どんな思いをお持ちですか?

アンロック伏見さん 
有用なアドバイスもいただきましたし、この方のおかげで大家になることができたので、感謝しています。銀行さんにも、同じ気持ちです。S銀行さんに対して、色々なことを言う人もいますが、僕は他ではやらないことをやっていく姿勢が好きです。

「この銀行が融資を出さなければ、こんな苦労はしなかったのに・・・」とは思いません。コンサルタントも銀行も、使い方次第。色々と思うところはありますが、それで相手を恨むのは筋違いだと思っています。

――ローンはあと28年残っていますよね。中古のRCマンションですと、維持費などにもお金がかかりそうです。今後のことはどうお考えですか?

アンロック伏見さん 
先のことはわからないので、その時々のベストを尽くしていきたいです。この後に買った2棟目・3棟目は一棟目の反省を生かし、利回りの高いものを買いました。今後も、地方の高利回り物件を買い増していって、1棟目のリスクを他の物件で補うという形を作っていければと思っています。

少し話は変わりますが、将来的にはグーグルやソフトバンクが賃貸業界に入ってくる、なんてことも考えられます。そうなれば「家賃はゼロでいいから、日々の活動データをとらせていただく」というようなアパートも出てくるかもしれません。

変化が始まれば早いですから、色々なことを想定しながら、生き残れる体制を築いていきたいです。

後編:第24回 破綻危機を乗り越えて出会った「外国人向け賃貸業」という天職


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