――民泊新法が施行されたのが2018年6月。施行前後の市場変化をどう見ているのか。
木村 新法施行による最も大きな変化は、大手企業が参入し始めたこと。それまで適法か否か不明確な部分があり、興味があっても踏み出せなかった企業、特に大手が民泊を取り巻く様々なサービス提供に乗り出している。それにより利用者にとっては選択肢が広がった。一方で、それまで民泊を運営してきた個人オーナーの中には、新法に基づくライセンス取得の手続きが負担となり、やめてしまうケースも見られた。
黒沢 そうした負担を軽減しようと、当社では行政書士ネットワークと連携し、民泊許可・手続きのクラウドサービス「ミラノバ」を展開している。必要な届け出書類の作成や収集、役所への手続きなどをサポートするものだ。建築基準法や消防法などの法的側面も理解していなければならならず、特に外国人オーナーにとっては、言葉の壁もあり、こうした手続きが日本人以上に高いハードルとなっているからだ。
――来年はいよいよ東京五輪が開催される。民泊をやってみようとする人が増えるのでは。
黒沢 宿泊需要は強く、既に都内のホテルでは、開催期間の料金は通常の数倍の高い水準で予約が入っていると聞く。当社への問い合わせ数を見ても、かなり民泊事業への関心は高い。東京五輪といっても、競技は東京以外の首都圏や東北、北海道などでも行われるため、普段は宿泊ニーズが少ないエリアでも、開催期間中は期待できるエリアはあるだろう。
――民泊仲介サイトも増えてきた。物件オーナーはどのようにサイトを選ぶと良いのか。
木村 サイトによって特徴があるので、それをよく見極めたほうが良い。例えば中国客に強いサイトや欧米からの客に強いサイト、また当社のように家族やグループの大人数の滞在に強いなど。所有している物件の立地や部屋面積などと照らし合わせて、マッチするサイトをいくつか選択すると良いと思う。国籍による宿泊傾向も重要で、例えば日本人客は1、2泊、欧米からの客は1週間ほど滞在することが多い。更に、東南アジアからの客はグループなど人数が多いのが特徴で、広い部屋が好まれる。
――民泊の資産活用としての可能性は。相続物件も今後増えると想定されているが。
黒沢 手続きや運営を代行会社に委託しても、賃貸住宅として活用するよりも収益性は高いと判断して、2カ所目、3カ所目と民泊物件を増やしている人もいる。ただ、当たり前だが、準備期間や的確な市場判断は必要だ。宿泊の業態としては、住宅宿泊事業法に基づくいわゆる民泊のほかに、旅館業に基づく旅館・ホテル、そして特区民泊があり、旅館業法と特区民泊は1年365日運営できるが、住宅宿泊事業法では稼働可能上限が180日と決められている。自治体によっては更に制限を設けているところがある。当社が申請を手伝う案件としても、収益性を考慮し、結果的に住宅宿泊事業ではなく、旅館業法に基づく旅館・ホテルとして許可を取得するケースは多い。
木村 自治体もクレームやトラブルがどの程度出てくるのか分からないので、今はある程度厳しい条件を設けているのだと思う。ただ、こうして大手企業が参入し、様々な周辺事業が登場して土壌ができつつあるという意味は大きい。今後、安全な市場として醸成されていくと、自治体の姿勢も変わり、緩和の方向に変わるのではないかと期待している。また、見方を変えれば、ある程度ルールが厳しいということは、それだけ安全・安心であるという利点として捉えることができる。
黒沢 少子化の中、親が暮らしていた戸建て住宅や所有していた不動産を相続するケースも多くなるだろう。ただ民泊は建物があればすぐに開始できるというものではない。一般の不動産情報サイトでも「民泊可」と記載されていることがあるが、これは所有者が民泊として使うことを許可している、という意味であり、設備や仕様が整っているという意味ではないことが多い。しかし、もし所有者が、民泊としてすぐに使用できる状態にした上で、こうしたサイトに本当の意味で「民泊可」物件として掲載していくと、収益物件としての買いニーズはかなり強いのではないか。
木村 確かに収益物件を探している人は多いので、そういった環境が整えば、流通市場でも存在感は出てくると思う。いずれにしても民泊事業に参入し、軌道に乗せていくには、各段階でサポートしてくれるパートナーを持つことが大切だ。将来的には、民泊が不動産活用の選択肢の一つとなることを期待している。
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