政策

おためし移住 ワープステイという提案(2) 交流が日本を救う(上) 都会と地方をつなぐ〝風の人〟

高齢化率は40%へ

 現在の日本の高齢化社会の現状は、高齢者(65歳以上)比率が総人口1億2000万人の25%(世界最高)で約3000万人。前期高齢者(65~74歳)と後期高齢者以上がほぼ同数となっている。

 今後、数十年間総人口は減少(2060年には8600万人)していくが、高齢者人口はほぼ横ばい(3000~3500万人)で推移する。したがって、高齢化率は25%から40%に上昇する。

 戦後の都会を中心とした急速な高度成長の結果、地方では過疎化とともに高齢化が進んでいるが、今後は都市圏において団塊の世代を中心に急速な高齢化が始まる。

 現在、地方においては、長年の過疎化のため休耕田の増大、獣害(イノシシ、シカ)の被害の拡大などにより世界に誇るべき日本の自然、田畑、里山が荒廃している。

 一方、都会においては団塊の世代のリタイアにより、生きがいの喪失、定年性依存症(アルコール、パチンコ、出会い系サイトなど)が社会問題化してきている。 さらに、都会では後期高齢者が急速に増大し、自治体の財政難も反映し、地価の高いエリアでは特別養護老人ホームなど介護施設の整備が遅れている。

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八方塞がりを打開

 そのため、待機者が数十万人にのぼり〝介護難民〟という現象が発生している。このような八方塞がりの感のある時代に一つの大胆な提案をしてみたいと思う。

 まず、高齢者の幸せとは、リタイアした人が尊厳をもって余生を送れることであり、そのために重要なことは、健康とともにリタイア後の年金を今後も65歳から、約束通り確保するとともに尊厳死・安楽死に関する法的整備をおこなうことである。

 体力もある年金受給者(前期高齢者)は、今後数十年間1000万人以上いるわけであるから、彼らが日本の一つの大きな問題点である地方の深刻な過疎化に積極的に取り組み、地方に数年間定住して消費需要を復活させることが重要である。

 日本の地方は四季に恵まれ、水、空気も清く、田畑、里山は食物の宝庫であり、彼らが日本の一次産業の潜在力を顕在化させるお手伝いをすることである。

協同で過疎化に挑む

 そのためには、ハードルの高い〝永住〟というより、元気な間、5年間でも地方に定住し、農林漁業のお手伝いをする。つまり、情報と機動力をもった都会の人〝風の人〟が地方の人〝土の人〟に新風を吹き込むとともに、〝土の人〟のコミュニティにも参画して、協同で地方の過疎化に立ち向かっていくことが重要である。

 その結果、日本の国土も保全されるし、アクティブな年金受給者が〝循環的に定住〟することにより、消費需要を喚起し、若者の仕事も増加していく。

 またワープステイする本人も、おいしい水や空気のもと、規則正しい食事、適度な運動、コミュニティ活動をすることによって、会社人間から地域コミュニティ人間へ脱皮することができる。健康寿命も延び、将来の要介護率のダウンにもつながる。

 (ワープステイ推進協議会理事長・大川陸治)