埼玉県川越市(川合善明市長)は12月から、市内の歴史的建造物をワーキングスペース(ワークスペース)として活用する実証実験を開始した。川越市では歴史的建造物の利活用を促進しており、今回は国の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を活用するもの。実証実験では選定されたモニターが使用し、今後の活用ニーズを把握・検証する。12月11日にはワークスペースの見学会が開かれた。
今回の実証実験は歴史的建造物の新たな活用方法を発掘するのが狙い。使用する建物は「小島家住宅」と「綾部家」の2物件。「小島家住宅」は1901(明治34)年に建築された景観重要建造物。「綾部家」は明治時代初期の建物で、都市景観重要建築物。いずれも2階建てで民間が所有する。
「小島家住宅」は12月8日から、ワークスペースとして1階と2階を使用している。「綾部家」は来年1月上旬から1階を使用し、ワークスペースを提供する。実証実験の終了は両物件とも来年2月末となる。
ワークスペースの利用者は新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、事前に関係者間で協議。内閣府の「地域未来構想20オープンラボ」(自治体や専門家、関係省庁のマッチング支援事業)に登録して川越市の取り組みに資する検討を行う会社や専門家、今後の活用・マッチングイベント等に関する事業者・金融機関等の関係者、旧川越織物市場再整備事業(文化創造インキュベーション施設整備事業)や歴史的建造物の今後の活用に資する意見を持つクリエイターなどをモニターとして選定。スペースの区分や使用期間を調整して、20社程度の使用を見込む。ワークスペースの運営はNECキャピタルソリューション関東支店が担う。
利活用の意見収集
川越市には歴史的建造物が多数存在する。景観重要建造物と都市景観重要建築物だけでも85件に上る(20年3月時点)。その一方で、維持管理に関するコスト負担、再生・利活用への情報不足という課題があった。
川越市では「所有者と活用したいという事業者との橋渡しをするシステムをつくり、民間の建物は民間で活用していく。そのほうが活気のある施設になる」(川越市都市景観課の平林直主査)との方針で、これまでも歴史的建造物の利活用に関する取り組みを進めてきた。
今回の臨時交付金は「新しい生活様式」のモデルを検討するもの。ワークスペースとしての利活用検証のために、実証実験に至った。都市景観課の池田麗子主幹は「川越という地の利や歴史的建造物がワークスペースとして対応できるかどうか、意見をいただきたい」と説明した。
実証実験の結果を踏まえ、歴史的建造物の所有者と利用者のマッチング案件としての可能性、更にシェアオフィスやコワーキングスペースとしての活用も検討していく。