人口約20万人の山口県山口市を中心とした住宅販売と、全国で収益物件の売買を行うERAスクエアイノベーションは〝革新〟を掲げる地域企業だ。「新しいビジネススキームをつくるのが好き」と話すのは同社設立に携わった井原浩志専務取締役。プレイヤー兼マネジャーとして営業の第一線に立ち、全国大会では18・19年度と2年連続で売買部門チャンピオンに輝いた。
同社は12年9月に工務店として始動。リフォーム事業を展開しながら2年半後に宅建業を開始。「大工のいる不動産会社として、高品質、低コストの住宅を供給する。建築アプローチからの不動産販売が強み」とし、収益物件のデザイン性などに応用する。
ERA加盟は16年10月。主力の買取再販の査定数などが鈍化してきたとき、山口市内で開かれたERAの説明会に参加した。「自社から半径2キロ圏内で集中的に戦力を使うランチェスター戦略に共鳴した。前年に人気の高い学校区に本社移転をしたものの、地の利が生かしきれない状況に課題を感じていた」と、その場で加盟を決めた。
地域の空き家・空き地を調査しながら自社の管理看板を立てていくファーミング営業。当初は社員の実践につながらないという悔しさもあったが、「2年目以降、地元で名が知られていくと、住宅用地や戸建てなど査定や仕入れの件数が増えてきた」と振り返る。本部が提供する業務支援ツールも積極的に活用し、「査定システムなどの武器が安価で利用できる。他エリアの加盟店との交流が進むと商機も広がる」と話す。
社員数は現在30名。「いわゆる〝人がいい〟という人材がいれば雇用する。人材ありきで事業を創出したい」と採用の門は常に開く。女性雇用にも注力し、「週1回、3時間から勤務可能」など多様な働き方を認めて募集。同社の女性比率は従前の2割から6割弱まで増加したという。
昨年は商圏拡大を図るため福岡県に北九州支店を設立した。社内に幹部制度を設置し、これまで役員が担ってきた業務の大半も引き継いだ。「会社の顔は店長」という考え方の下、社員自身の経営者意識を高めるためだ。「手にする収入に応じて責任感もやる気も上がっている。自ら提案して動けるようになった」と社内変革の成果を受け止め、マネジャーとしての面白さも感じ始めているという。
コロナ禍による苦戦は続く。だが、井原専務は「外出できない今だからこそできることがある」と持ち前のチャレンジ精神を発揮。自ら物件を購入し、レンタルスペースと民泊を併用した運用モデルを研究するなど変革の道を探った。遠方客へのオンライン商談やテレワークで業務効率も上がったという。「その業種やエリアでしかできないことを考え抜き、実践してみるときだ」と前を向く。