電気錠の制御や利用履歴を管理し、高いセキュリティを保ちながら宅配便の受取・発送を可能とするコンピュータ制御式の「デジタル宅配ボックス」。日本宅配システム(愛知県名古屋市、淺井泰夫代表取締役CEO)は郵便物の再配達を削減し、脱炭素社会の実現を目指す「デジタル宅配ボックスDX&SDGsPROJECT」を進める。コロナ禍の非対面ニーズやDX、環境配慮の観点から既存マンションの管理会社や賃貸オーナー、オフィスでの需要が伸びているという。
コロナ禍で宅配便の「非対面受取」が浸透する一方、懸念材料となるのが荷物紛失や「置き配」などのトラブル。同社営業推進部門長の木本和良氏は、一般的なダイヤル式では不具合があった際の対応の遅れや私物の長期占有リスクがあるとした上で、「当社は93年の創業以来、宅配ボックス専業メーカーとして設計・開発から製造・販売、設置後の保守メンテナンスまで自社一貫体制を取る。コールセンターが遠隔で365日サポートできる」と説明。入出庫電子証明番号の発行や長期滞留防止などの独自技術で、「安心確実な受け渡しを実現する。再配達の削減によって、持続可能な脱炭素社会の実現に寄与する」と語る。
リモートで全国から
同社は、デジタル宅配ボックスの更なる普及に向けてこのほど、同プロジェクトの第3弾となる「デジタル宅配ボックスプラザ」(予約制)をオープンした。これは全国からアクセス可能なリモート見学型ショールームで、製品の質感や機能を実際のショールームのように案内。外観だけでなく、受け渡し一連の動作や音声ガイダンスを視聴できる。従来は首都圏を中心に販売してきたデジタル宅配ボックスの導入サポートを強化。全国8拠点で対応し、その地域の実情に詳しい営業担当者が案内する点が特徴。遠隔地から同時に複数名での見学も可能とし、新規顧客の開拓につなげる狙いだ。
同社は、内覧会の形にも変化を生み出す。20年12月リリースの「JDSプレゼンテーションシステム」は、これまで営業担当者が対面で実施してきた操作説明を宅配ボックスに設置したデジタルサイネージで実施。「密」を回避し、何度でも繰り返し確認できる。木本氏は「取り扱い説明をペーパーレスで実現しようとするDXは、宅配ボックスでは先進的で差別化が図れる」と自負。各地区のディベロッパーの賛同を得た結果、3月末竣工の全国のマンション約100件で設置の見込みだという。
同社では昨年5月の緊急事態宣言解除後からウェブサイトへのアクセスが急増。21年2月は前年同月から倍増しており、今まで問い合わせのなかった地方からの反応も新たに出てきたという。顧客層も創業当時からの新築分譲マンションの事業主に加え、既存マンションの管理会社や賃貸アパートのオーナー、オフィスでの需要が伸長。「非対面受取」が居住者に知れ渡りマンション理事会で議題に上がったことや、個人賃貸オーナーがポータルサイトなどへの掲載情報を空室対策として気にするようになったことが背景にあるという。国を挙げた「脱炭素」の取り組みで企業各社が環境配慮を優先する中、管理物件への宅配ボックス設置そのものが環境に対する企業努力となる点も要因の一つ。新築戸建ての施主がホームページ経由で申し込むケースも増えているという。
最長15年のリースも
導入促進に向けた取り組みも進める。購入のほか、経費処理が可能なリースも選択肢に加え、最長15年のリースも可能に。製品の一部にAEDやEV充電システムを設置するほか、生活支援サービスの強化も視野に入れる。不動産事業者に対しては「すべての建物にデジタル宅配ボックスを入れたい。屋内、屋外でも可能。マンションであれば各フロア、各戸で設置できる商品構成を整えている。専業メーカーの一貫体制で提供するので、安心して活用してほしい」(木本氏)としている。