国土交通省は4月15日、国土審議会土地政策分科会企画部会の第41回会合をウェブシステム形式で開き、土地基本方針の改定案などに関する検討を進めた。
同会合では冒頭、同省担当課長からコロナ禍の影響が反映された21年の地価公示をはじめ、同省が検討を進める「不動産IDのルール整備」、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を推進する「Project PLATEAU(プラトー)」について説明が行われた。
不動産IDは、20年7月17日に閣議決定された規制改革実施計画を受けて検討を開始。関係者で使用する共通の不動産の識別番号(ID)の内容や対象、利活用・普及に関するルール整備を進めることで、官民の様々なデータベースに散在するデータの名寄せ・連携を促進し、民間主体のノウハウ・創造性に基づく多様なサービスの創出を目指すためのもの。不動産取引の活性化や消費者の利便性向上のほか、所有者不明土地の所有者探索や低未利用不動産の利活用に資することが想定されるという。
「プラトー」は、スマートシティのデータ基盤として現実の都市をサイバー空間に3次元的に再現するもので20年度は全国約50都市の3D都市モデルを作成。新技術を活用した都市活動の可視化、防災政策の高度化などユースケースを開発、公開している。
近日、意見公募開始
政府の関係閣僚会議によって今年5月ごろに見直しを図るとされている「土地基本方針」の改定案では、これらの対応も盛り込まれた。改定案の3本柱は、(1)民事基本法制の見直しによる所有者不明土地の発生予防・円滑利用のための対応、(2)所有者不明土地特措法施行後3年経過の見直しに向けた検討、(3)その他、土地に関連する施策に関する記載。(2)ではランドバンクの取り組みや管理不全の空き地等に関する仕組みの検討のほか、防災設備等地域のニーズを踏まえた地域福利増進事業の対象事業の拡充を掲げた。(3)では、防災・減災やDXに資する情報連携の基盤整備等に着目。流域治水の観点から水防災に対応したまちづくりや、不動産IDのルール整備の検討などが盛り込まれた。
同分科会委員からは、不動産IDに関して、課税情報との関連付けやユーザー利便性に関する質問のほか、検討プロセスにおける民間団体との連携の必要性などが指摘された。3D都市モデルに関しては「地下空間の情報や過去の防災履歴など時間軸の反映が必要」との意見が出された。
不動産・建設経済局の千葉信義土地政策課長は、「街も自然災害も変化を続ける中で、その対応には時間軸の意識が不可欠。問題意識を持って施策を展開する」と説明。その決意の第一歩が今国会に提出した流域治水関連法案とした上で、「この基本方針は、関係省庁等との調整が可能。常にブラッシュアップを意識して取り組む」と述べた。
なお、土地基本方針改定案は近日中に意見公募を開始し、5月中旬に土地政策分科会で審議を図り、関係各所の調整を経て、5月末に閣議決定を行う予定とした。