政策 総合

税制改正大綱 ローン減税4年延長 「省エネ」転換を明確に

 12月10日、22年度の与党税制改正大綱がまとまった。岸田内閣が掲げる新しい資本主義の実現に向け、主要項目に賃上げや地方活性などを見据えた税制措置を置く。住宅ローン控除は、人口減少や脱炭素化対策など社会環境の変化に対応するための見直しを行い、4年間延長する。控除率や所得制限の引き下げと共に、省エネ性能が高い住宅の取得に対する優遇措置も設ける。固定資産税は、22年度に限り、商業地に係る課税標準額の上昇幅を現行の半分までとする負担調整措置を盛り込んだ。

 ローン残高の1%を所得税から控除する住宅ローン減税。現行制度は原則21年末で期限を迎えるが、その経済的波及効果の大きさから、住宅・不動産業界の各団体が延長・拡充等を要望していた。

 他方、毎年の住宅ローン控除額が住宅ローン支払い利息額を上回る状況が会計検査院から指摘されている点も踏まえ、22年度税制改正では、住宅ローン控除の適用期限を25年末まで4年間延長すると決定。消費税率引き上げに伴う反動減対策としての借入限度額の上乗せ措置は終了し、代わりに、カーボンニュートラル実現の観点から、新築住宅およびリフォームにより良質化した上で販売する買取再販住宅で上乗せ措置を講じる。

 控除率は現行の1%から0.7%に、借入限度額も4000万円から3000万円に引き下げる。新築の控除期間は23年までに居住した場合、現行の原則10年間から13年間に延長。更に適用対象者の所得要件を2000万円以下に引き下げ、高所得者層ほど控除額が優遇された状況を改める狙いだ。床面積は合計所得金額が1000万円以下の年に限り、床面積の下限は現行の40m2以上を維持する。

 住宅分野の脱炭素化推進のため、認定住宅等に対する上限額がより高く設定されたのも特徴だ。例えば、新築認定住宅に23年までに居住した場合、借入限度額は5000万円(24、25年の居住は4500万円)とするなど、認定住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅の3段階で濃淡を付けた。更に、これまで新築住宅に限定していた上乗せ措置を既存住宅にも拡大。一般的な既存住宅の借入限度額が2000万円(期間一律10年)のところ、認定なら3000万円(同)とする。また、24年以降に建築確認を受ける新築住宅は、省エネ基準の要件化を行うなど所用の措置を講じ、脱炭素化を促進する狙いだ。 

固定資産税 商業地のみ特例  1年限定、上昇幅半分に

 住宅ローン控除の見直しと共に今回争点の一つとなったのが、自治体が商業地や住宅地などの土地や建物に課税する固定資産税だ。3年に一度の固定資産税評価替えに当たった21年度は、コロナ禍の経済悪化や地価変動を考慮し、商業地をはじめ、宅地や農地などすべての土地を対象に、課税標準額の据え置き措置を実施。地価が上昇した場合も、21年度に限り、課税標準額を20年度から据え置く特例措置が講じられた。

 一方、固定資産税は市町村の基幹税だ。地方の税収確保につなげたい自民党は特例終了の姿勢を示したが、公明党は「景気は回復途上」として特例延長・負担軽減策を要望。与党間で協議を重ねた結果、22年度に限り、商業地に係る課税標準額の上昇幅を評価額の2.5%(現行5.0%)とすることで決着した。

 土地に係る都市計画税も同様の負担調整措置とした。

贈与税非課税は2年延長

 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税非課税措置は、適用期限を23年末まで2年間延長する。非課税限度額は、格差の固定防止等の観点から、耐震、省エネ、バリアフリーの住宅用家屋を新築した場合は1000万円とし、それ以外は500万円で見直す。適用対象となる既存住宅の場合、築年数要件を廃止し、新耐震基準に適合している住宅とする。

 個人所得税では、認定住宅の新築等をした場合の特別控除の適用期限を2年間延長すると共に、22~23年に居住する場合、対象住宅、標準的な性能強化費用に係る控除対象限度額を650万円、控除率を10%とした。同様に、既存住宅で特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除は、適用期限を2年間延長。加えて、控除対象限度額についてバリアフリー改修で200万円、省エネ改修で250万円などと定めた。また、所有者不明土地法の改正を前提に、同法に基づく土地収用法の特例対象拡大に伴う特例措置や地域福利増進事業に係る特例措置を拡充する。

 登録免許税では「認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に係る軽減措置」や「買取再販で扱われる住宅の取得に係る特例措置」、「マンション建替事業の施行者等が受ける権利変換手続開始の登記等の免税措置」などを延長する。

与党間調整で攻防も

 11月26日の自民党税制調査会総会を皮切りに議論が重ねられた22年度税制改正。特に住宅ローン控除は、会計検査院からの指摘もあり、今回改正の目玉となった。自民党税調でも12月2日のマルバツ審議を経て、「マル政処理」すなわち政策的検討を要する課題として議論を深めた。

 同3日の「マル政審議」では、同党本部に多くの業界団体が集まり、特例延長などを要望した。参加議員からも「控除率を引き下げても、期間延長で総額維持を」という意見が集中。岸田政権が掲げる子育て・若年世帯の住宅取得支援強化の観点からも延長すべきとの声が聞かれた。また、21年度で「コロナ特例」を設けた固定資産税については与党間で最後まで調整が図られたが、7日、対象を商業地に限り、22年度単年の負担調整措置とすることで決着した。

 自民党税制調査会の宮沢洋一会長は、住宅ローン控除の最終形が示された7日の小委員会後、囲み取材で「2年間は現行と同様の形でまとまった。その後は減るが、上質な住宅に対して優遇措置を拡大した。住宅政策としていい方向性の税制改正になるのではないか」と手応えを語った。省エネ政策転換を明確にし、住宅・不動産業界をはじめとした経済再生の下支えとなるか、今後も注視が必要だ。