政府は、耐震・環境不動産形成促進事業のあり方を議論するため検討会を設立した。2050年カーボンニュートラルの実現目標や、世界中でESG投資への注目度が増す中、不動産分野での脱炭素化・温室効果ガス削減に向けた取り組みなどが求められていることを踏まえたもの。事務局は国土交通省不動産・建設経済局不動産市場整備課と環境省地球環境局地球温暖化対策課に置き、座長は中川雅之日本大学経済学部教授が務める。今年6月をめどに報告書をとりまとめる計画だ。
同事業は、老朽・低未利用不動産について、国が民間投資の呼び水となるリスクマネーを供給することで耐震・環境性能を有する良質な不動産の形成(改修・建替え・開発事業)を促進する目的で創設された。13年3月に国から補助金を受けて支援基金を造成し、これまでに18案件、総額300億円以上の出資決定という実績を持つ。地域の再生、活性化に寄与するまちづくりや地球温暖化対策を支援し、三大都市圏に加え地方圏でも案件を組成している。
3月31日に開かれた第1回検討会では、同事業の実績や実施体制についての評価・改善点の振り返りをはじめ、不動産分野を取り巻く環境を踏まえた今日的意義や必要性を共有。更に対象事業の支援要件や出資スキームのあり方、普及・促進策、運営体制など今後のあり方についても意見が出された。
国交省の長橋和久不動産・建設経済局長は施行10年の節目を迎える23年3月に向けた政策効果の検証の必要性に言及。「世界的な脱炭素化やESG投資促進など、この10年の著しい変化を踏まえ、耐震・環境性能を有する良質な不動産の形成は現在も将来の日本にも不可欠」と述べた。