売買で取り扱う建物に未登記部分がある場合、もしくはありそうな場合の対応は次の3つがある。1つ目は未登記部分の範囲を確認すること。2つ目は重要事項説明書や売買契約書に明記すること。3つ目は表示変更登記を行うこと。これらの対応をできる限り早めに行うことが必要となる。
未登記部分を放っておくとどうなるか。悪意ある売主なら「未登記部分は売却していません。私のものですから利用しないでください」と売買後に所有権を主張しトラブルになるかもしれない。実際の法律の判断は異なるだろうが、売買契約書に対象不動産として記載がなければそのように言う可能性はあるだろう。当然、宅建業者にも責任が生じてくる。
また、建ぺい率や容積率が超過しているかが不明となる。結果、金融機関も違反建築かどうかの判別がつかないので、「融資ができません」という結果になる。どちらにしろ未登記建物部分をうやむやにしてもメリットはないので、冒頭の3つの方法で是正及び明示をしておくのが賢明と言える。
細かく見ていこう。1つ目の未登記部分の範囲の確認は現地での目視、図面など書類を見て行う。周辺の建物と見比べて大きすぎたり、登記事項証明書上は全ての階の床面積が同じなのに1つの階のみ大きかったりと、現地調査で見て分かることは多い。また、建築確認通知書や建築計画概要書、建物の竣工図面などを見て現時点の建物との違いがないかも見る。何らかの違いがあり、それが登記上に反映をされていなければ、未登記建物部分はあると考えられるだろう。
2つ目の重要事項説明書、売買契約書への未登記建物部分の記載は必須だ。「建物の1階部分に未登記部分がありますがその面積は不明です」「建物未登記部分も売買対象範囲に含まれます」など、未登記建物部分があること(ありそうなこと)、その範囲、面積、売買対象範囲に含まれることは記載しておきたい。 なお、重要事項説明書には「建築確認通知書の建物図面では10m2ほどの未登記建物部分があるものと考えられます」など、どのような調査を行って判断をしたかまで記載しておくと丁寧だ。
3つ目の表示変更登記はトラブル対策や融資対応を考えるならこちらも必須だ。土地家屋調査士に依頼をして未登記建物部分を明らかにし、その面積をもって登記事項証明書の面積を変更(表示変更登記)しておこう。費用はかかるので売主も躊躇(ちゅうちょ)するだろうが理由を説明すれば納得するに違いない。対応が早ければ早いほど売買がスムーズになるので、できれば販売前に表示変更登記を済ませておくのが好ましいが、遅くとも売買契約の締結前には済ませておこう。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。