政策

社説 中小業者の人手不足倒産 対策は多様な視点で

 人手不足倒産が増えている。帝国データバンクによると、2024年に従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする倒産は342件となり、調査を開始した13年以降2年連続で過去最多を更新した。業種別では物流、建設が多いが中小不動産業者も例外ではない。ただ、中小不動産業の場合には単なる人手不足というより、IT人材など高度な能力を備えた〝人材不足〟による倒産危機が迫りつつあるというべきだろう。 

 事実、ある調査によると、不動産業者を含む日本の中小企業では約7割の企業が「IT人材がいない」と回答し、DXの推進が求められる中、大きな課題となっている。また、少し前になるが経済産業省は30年に国内のIT人材が最大で79万人不足する可能性があると予測している。特に中小不動産業者の割合が大きい不動産業界では今後もITスキルを持つ人材の確保が難しい状況が続くと予想される。

 こうした人材不足への対応策としては2つのアプローチが考えられる。一つは会社全体の給与体系を見直し、ITなど高度な人材を雇う財源をねん出する方法だ。この手法は既存従業員の理解を得る必要があるが、中途採用を可能とし即効性というメリットがある。もう一つは逆に時間を掛けてでも社内から希望者を募り、外部研修で学ばせるなどスキルを身に着けさせる方法だ。

 人材問題に関して注目すべきもう一つのトレンドは従業員のエンゲージメント(会社に対する満足度や共感)を高め、離職率を下げるという視点だ。DX精通者など高度な人材確保が難しいのはもちろんだが、一般従業員も離職されるとその穴埋めの採用にかなり苦労するのが昨今の状況だ。欠員状況が長引くと更なる離職者が出ることも考えられる。

 そうした状況に陥らないためには普段から従業員同士の交流を深め、孤立する社員をなくし、全員が楽しく仕事ができる職場環境を整備する重要性が指摘されるようになってきた。

 中小不動産業者としては後継者難も大きな課題だ。黒字経営でも後継者がいなければ廃業するしかない。昨今は子や親族が引き継ぐケースも少なくなっているようだ。実はこうした後継者難についても、従業員のエンゲージメントを高め、会社の経営理念に強く共感する社員を増やせば、その中から優秀な人材を抜擢することができる。

 最後に不動産仲介業については、昨今のエンドユーザーは会社を選ぶというよりも、個々の営業社員をその能力・得意分野などで選択する傾向がみられる。そうしたニーズに対応するには自社ホームページで営業社員の能力を紹介するコーナーを設け、社員が顧客から選ばれるよう互いに切磋琢磨するモチベーションアップの環境を整備することも必要だ。