中川寛子さんのプロフィール
東京都大田区生まれ。両親の田舎が大家という家系で、不動産賃貸業に親しみを感じながら育つ。早稲田大学教育学部社会学科卒業後、編集プロダクションに入社。リクルート社の住宅情報誌、同賃貸情報誌の編集を外部スタッフとして担当する。
20代後半から、世田谷区内の区分マンションを買い始め、少しずつ家賃収入を増やす。現在は「東京情報堂」の代表として、不動産関連の執筆やセミナーなどで活躍中。
■ 人気の街と不人気の街の差はどんどん大きくなる
――中川さんは、「フォレント」「住宅情報」などの住宅情報誌の企画や執筆の仕事を20年以上されていたそうですね。
中川寛子さん
はい。土地と縁があったようで、2005年からはAll Aboutというサイトの「住みやすい街選び(首都圏)」のガイドも担当しています。街歩きが好きなので、楽しい仕事です。
大きなマンションのプロジェクト等があると、その街についての記事を依頼されるのですが、大半のライターさんはその街に行かないでページを作ります。私は実際に行ってみて感じたことを、他の人とは少し違う視点で書くようにしています。例えば、高円寺なら、阿波踊りの話題に終始しない、という感じです。
――なるほど。たくさんの街を取材された中川さんですが、これから部屋を借りる人に支持される街は、どんなものになるとお考えですか?
中川寛子さん
今後は、人気の街と不人気の街の差が、どんどん大きくなると思います。キーワードは便利なこと、自治体に体力があること、安全に暮らせることの3つです。
世帯の構成人数が減る中で、小さくてもいいから利便性の高い住まいを選ぶという人が増えていますし、自治体によって、住人へのサービスの質に差が出るという現象も顕著になりつつあります。
安全に暮らせることは、特に人々の意識が高まっている部分です。この3つにプラスして、「花火が見える」などのウリがある街は人気が高まるでしょうね。
■ 地盤の善し悪しは地図を見れば一目瞭然
――なるほど。中川さんは、部屋探しをされる方やマイホームを建てる方からの相談も受けているそうですが、最近は、どんな傾向が見られますか?
中川寛子さん
東日本大震災以降は地盤の強度や過去の水害の履歴など、「この場所で安心して暮らせるか」ということについての問い合わせが増えています。地震に限らず、この頃の日本の気候はなんだかおかしいですよね。
何もなければ幸いですが、「万が一、何かが起きてもおかしくない」という前提で住まいを選ぶことが大切だと思いますし、部屋探しをする人たちも、そのような意識になってきています。
――地盤について、もう少し教えてください。
中川寛子さん
地盤の善し悪しは、地図を見れば一目瞭然です。今はGIS(地理空間情報)が進化していますから、住所を打ち込むだけで、グーグルアースやグーグルマップ上にその土地の地盤や地形が表出されるようなアプリも複数出ています。そのデータから、その場所が安全に暮らせるところがどうかは簡単に予測できます。
首都圏だけでいうと、「高さ」と「固さ」と「古さ」がほぼイコールになっているので、ざっくりですが、高い方が安全という言い方もできます。過去の地盤調査の結果を公表したサイトもあります。新築のアパートを建てる大家さんなどには参考になると思います。
――もともと持っている土地や、買った土地の地盤が弱いとわかった場合、対策はあるのでしょうか?
中川寛子さん
通常は業者さんに頼んで、地盤改良を入れることになります。改良工事には100万~200万円の費用がかかりますから、経済的な面から見ても、早い段階で地盤の状態を調べておくことは重要です。
法律的には一般的な一戸建て建設では地盤調査は義務付けられていませんが、安全を考えれば欠かせない部分です。
補足すると、地盤調査後、地盤改良が必要と言われたときには、セカンドオピニオンをおすすめします。地盤調査会社が仕事を増やすために、とくに問題のない土地なのに、改良が必要だといって工事をするケースがあるからです。
■ 安全だけはお金に代えられない
――勉強になります。地盤の専門家として、中川さんから大家さんに向けてアドバイスをお願いできますか?
中川寛子さん
安心して住めることは、人が暮らす上で最も基本的なことだと思います。日本は昔から地震国なのですから、住まいを提供する立場として、少しでも安全と思えるところを選ぶべきではないでしょうか。
私は目黒区内の賃貸物件に住んでいますが、東日本大震災のときはあまりあわてずに済みました。大家さんから、「地震対策として頑丈に造ってある」と聞いていましたし、事前に地盤を調べておいたことで、「このまま揺れても、ここにいれば大丈夫だろう」と予想できたからです。
お金の折り合いの付け方は人それぞれですが、私は安全だけはお金に代えられないと思っています。
――最後に、これから大家さんになろうとする方に、大家歴20年以上の中川さんからアドバイスをお願いします。
中川寛子さん
これからの時代、大家に大切なのはコミュニケーション能力だと思います。以前、大家さんが集まるサイトの編集を担当していたとき、「空室が埋まらないのは管理会社が悪い」「不動産屋にだまされた」というような、業者さんへの文句の書き込みが多いことに驚きました。
ネット社会の今、不動産会社はどこも同じ情報を扱っていますから、おかしな業者は自然と淘汰されるはずです。業者さんの文句ばかりいって、何も動かないでいれば、空室は空室のまま。それより、コミュニケーション能力を磨いて、FACEBOOKで入居者を募集してみるなど、新しいチャレンジを始めてみてはいかがでしょうか?
入居者さんとのコミュニケーションはやってみると意外とできるものです。ただ、トラブル防止のために、宅建が取得できる程度の知識はあった方がいいかもしれません。
前編:第5回 「入居者からの紹介」で20年以上空室ナシのライター大家さん
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