■地価は都市部で軒並み上昇、一方で下落基調から抜け出せない地域も
国土交通省が公表した今年の基準地価(都道府県地価調査)によれば、地価は訪日客などインバウンド需要の要因等により、東京や大阪といった大都市部にとどまらず、地方都市まで広く上昇した。
全国で最も高い地価は銀座の「明治屋銀座ビル」(4,320万円)。大阪圏の最高地価は、「住友商事心斎橋ビル」で、45.2%の上昇率を見せた(2,440万円)。三大都市圏や主要都市は軒並み地価が上昇している。
その半面、下落基調から抜け出せない地域も多い。今回の基準地価で住宅地変動率を見ると、最も下げたのが岡山県倉敷市の真備町で16.1%の下落、価格は1㎡あたり2万8,600円だった。下落率2位も中国地方で広島県三原市本郷町(15.8%下落)となり、価格1万6,000円となった。また、下落率ワースト10には北海道が7地点(3~8位と10位)入っている。
岡山県や広島県は、昨年7月の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)の被害が大きく、被災地の住宅需要の減退が見てとれる。一方の北海道は、北海道胆振東部地震の影響よりも、地元経済の低迷があるようで、人口の減少と高齢化が地価を押し下げた。
地方の生活利便性が低い地域は、下落にも拍車がかかる。下落率9位の兵庫県穴栗市千種町(7.6%下落)は、過疎化に伴う商業店舗の店じまいなど地域の衰退が要因とみられる。
商業地の下落率を見ても、1位と2位が住宅地同様に真備町(15.5%下落)と三原市(12.0%下落)で、地価はそれぞれ5万3,400円と3万7,500円となった。真備町の昨年の下落率は、商業地が0.7%、住宅地が0.6%だったことをみると急降下といえる。
北海道も下位10位に6地点がランクイン。下落理由は、住宅地同様に豪雨被害と人口減少とみられる。ほか6位の岩手県九戸郡軽米町(8.1%下落)と10位の石川県七尾市神明町(7.5%下落)も、人口減少の影響が大きい。
■熊本市の商業地の地価アップに見る、地方経済を衰退から脱却させるコツ
一方、九州では、熊本市の商業地が22.2%と県内1位の上昇率となっている。サンロード商店街に訪日客が増えたこともあるが、近隣地区の再開発でバスターミナルを備えた大型複合施設「SAKURA MACHI Kumamoto」への期待が地価を押し上げたようだ。
同施設は9月14日にオープン。延床面積:4万4500 ㎡、総149 店舗に加えて都市型シネマコンプレックスや屋上庭園などのエンターテインメントを誘致、ホテル・住宅も併設している。地方経済を衰退から脱却させるには、人々が集まる機能を持つ街作りがカギとなることがわかる。
石川県は人口が減少しているものの、北陸新幹線開通後にビジネス客と旅行客の両方が急増し、金沢市は人口増加傾向。その金沢市のベッドタウン、野々市市の商業地は、平成3年以来28年ぶりに上昇に転じている。
■今後の不動産取引にはハザードマップが必須となる?
地価調査の結果からは、地価が自然災害の影響を少なからず受けていることがわかる。これを受けて今、ハザードマップに対する注目度が高まっている。不動産売買の際に、取引相手に対し、ハザードマップで地域の危険情報を提供することは、不動産の価値下落につながるという考えから、不動産会社は情報提供に後ろ向きとされてきた。
しかし、今年7月の全国知事会で三重県の鈴木英敬知事が、不動産取引時の契約相手に、浸水想定区域を記したハザードマップを提示することなどを提言していることで、この流れが変わる可能性もある。
国土交通省も対応している。不動産業界団体に対し「不動産取引時のハザードマップを活用した水害リスクの情報提供について」との依頼文を7月下旬に発出。団体加盟の宅建事業者が不動産取引の相手方に対し、契約が成立するまでに、取引対象となる宅地や建物がある市町村が作成・公表する水害ハザードマップを提示することなどを求めている。
不動産関係者としては、今後、各種公表地価の動向を分析し、ハザードマップを含め地域の特性等を加味した上で現状を把握、今後のビジネス戦略に活用していく必要があるといえるだろう。
(参照:基準地価、下落率ワースト10は過疎化に加え自然災害も要因!不動産投資家はハザードマップにも注目!!)
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