■全国約30拠点に自由に住める多拠点コリビングサービスがスタート
「月額4万円からの定額制で全国住み放題の多拠点コリビングサービス」を2019年4月に11拠点からスタートした株式会社アドレス(ADDress)が、2019年8月20日に京都市伏見区に全リノベーション拠点をオープンし、今秋には全国で約30拠点になるという。
この京都の新拠点物件は、近鉄丹波橋駅から歩2分(京阪丹波橋駅から歩3分)、築60年の元学生寮をシェアルーム3室などにリノベーションした物件である。
仕組みの概要は、2019年9月時点の料金体系では、個人は年会費480,000円またはおためし月会費50,000円、法人は月会費80,000円(企業内で共有利用、ただし同時に複数利用不可)。
一部地域物件以外は、光熱費を含んでいる。Wi-fi を完備、家具や水回り機器や家電など生活していくための設備は揃えている。ユニークなのは、年間費会員は、権利として希望する拠点からドミトリーベッドを自身の固定ベッドとして保有し、日数に限らず住まうことができ、住民票をその拠点に置くことも可能な点だ。(2019年9月現在規約による)
それぞれの拠点には「家守」という管理人を置き、HPでは、この家守や今後の注力拠点となる大阪・首都圏の空き家募集も行っている。募集案件は「空き家期間が1年以内で、改修工事不要」「首都圏・大阪から2時間圏内」「4DK以上の間取りの戸建て物件」としている。物件によって査定のうえ株式会社アドレスとサブリース契約か賃貸契約かを結ぶことになる。
賃貸に出して入居を得るにはアクセスなどの条件面で厳しく、空室が続いているという不動産オーナーには、検討の余地があるかもしれない。
■家なし生活=アドレスホッピングは広まるのか?
さて、利用者側の市場はどうなのだろうか。最近、注目を浴びている「アドレスホッピング(固定の住居を持たずに多拠点を転々とする生活)」なる言葉がある。
そんなことが可能か?と思えそうだが、社会人でも“リモートワーク”とこの“アドレスホッパー”を実践に移し、その考え方を伝える会社まで作っている人もいる。Noteなどを利用して自身の経験をシェアし、アドレスホッパーの名付け親として日テレ『マツコ会議』にも登場した市橋正太郎氏だ。
市橋氏自身のnote によると「京都大学卒業。サイバーエージェントに8年間勤務後、2017年12月27日から“アドレスホッピング”という居住スタイル」「メインの仕事はマーケティング。スタートアップや大企業の新規事業において、どうユーザーを伸ばせばいいのかをアドバイスしたり、時にはチームのマネジメントをしたり、売上目標を持って取り組んだりも。(2018年)9月に独立してから3ヶ月間、国内でもほぼフルリモートで仕事をこなしてきた」(ほぼ原文抜粋)とある。
つまり、現在は独立してリモートワークを行っているが、東証一部上場企業のサラリーマン時代からすでに固定の家なし生活であるアドレスホッピングを開始していたということだ。
何十年と続けられるのか?など時間軸で考えるといろいろ疑問もわくが、市橋氏は、これを「生き方(住み方)の選択肢を広げ、新しい豊かさを生み出すライフスタイル=カルチャー」と捉えている。
単なるメディアの一過性の話題になってしまうのではなく、カルチャーとして深めていきたいと会社も作ったとある。アドレスホッピングがライフスタイル・カルチャーだとしたら、ミレニアル世代を中心とする横軸の広がりはまだまだありえるように思える。子供が巣立った後の世代だってあり得るかもしれない。
このカルチャーが日本で定着すれば、住み方、受け皿となる物件も増えていくことになる。アドレスホッピング(今までの概念では“家無し生活”)の将来性を推し量る意味でも、まずは今回取り上げた「全国住み放題の多拠点コリビングサービス」の今後に注目したい。
(参照:海外不動産ナナメ読み⑥ 「月額4万円から全国住み放題も登場。家無し生活について考える」)
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