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“お荷物”だったバブル期のリゾートマンション、「民泊」で再興へ

新潟県の湯沢といえばバブル期にタワーのリゾートマンションが林立。一時期は華やかにもてはやされたが、バブル崩壊とともに価格も大幅に下落。今では10万円でも買い手がつかないほどとされる。

そんな湯沢のマンションに今、注目が集まっている。民泊を可能にし、それによってこれまで払う一方だった部屋が稼ぐ部屋に変身、価格も大幅にアップしているからである。

■民泊新法施行前に総会で民泊を承認

物件概要エンゼルリゾート湯沢

その物件は上越新幹線の越後湯沢駅から車で8分。1989年に建てられた全130戸の「エンゼルリゾート湯沢」だ。サウナの付いた大浴場があり、すぐ近くに岩原スキー場があるというスキーヤーにとっては悪くない物件だが、民泊開始以前は他の物件同様、見捨てられた感があった。

「定住している方は1割以下、それ以外はリゾート利用で年末年始、スキーシーズンなどにはいらっしゃるものの、そうした利用をする方も半分以下。あまり使われておらず、28㎡の1Kが10万円まで下がっていました」(株式会社エンゼル リゾートシェアリング事業部統括責任者・富士岡翔太氏)。

エンゼルはリゾートマンション専門の管理会社で、かつ湯沢ではホテルを経営している。同物件を所有していることもあり、リゾートマンションの資産価値向上・活性化のモデルケースとなるべく、それを利用すれば民泊ができるのではないかと考えた。

ホテル経営、マンション管理のノウハウを重ねれば物件所有者にとっても、民泊利用者にとっても良いサービスが提供できるというわけだ。

そこで民泊新法施行の2018年6月15日の3カ月前にあたる3月14日に総会を召集、そこで民泊可の承認を得た。もちろん、反対の声はあった。

「セキュリティ、海外旅行者のマナーを心配する声がありました。ですが、弊社は近くでホテルを経営しているという強みがあります。民泊導入を機にこのマンションのフロントの営業時間を延長、対面で必ずチェックインする。その折に大浴場の使い方などをきちんと伝えるなどと説明、最終的には承認が得られました」。

このマンションでは管理規約に「民泊禁止」が入っていなかった点もプラスに働いた。使用細則を変更するには半数の賛成で済む。管理規約の改正となると禁止した時同様の4分の3の賛成が必要になるため、ハードルが高くなるのである。

■上限180日のうち、137日が稼働

新法施行時には登録物件2室でスタート、開始8日目には初の宿泊者が訪れた。それから1年半。現在は届け出中も含め、40戸が民泊として運用されている。

宿泊状況だが、民泊運用であるため、年間180日が上限になる。現在の稼働日数は平均で137日ほど。1K28㎡の部屋の年間の宿泊代金は約170万円となっており、そのうち、3割をオーナーが賃料として受け取る。50万円強というところか。

エンゼルリゾート稼働実績1

「管理費や固定資産税などで20数万円かかっていたものが、持ち出しで払わずに済むようになり、20数万円は手元に残る。これまで払う一方だった部屋が稼ぐようになったわけです」。

湯沢の場合、一番の稼ぎ時はスキーシーズンで、部屋の広さにもよるが12月~3月は毎月20~30万円の売上になる。もうひとつ、例年7月末に4日間にわたって行われるフジロックフェスティバルも稼ぎ時である。この間だけで30万円近く稼ぐ部屋もあるほどだ。

エンゼルリゾートのフジロックフェスティバル時の収益

フジロックフェスティバル時の収益

■投資用に分譲した部屋はいずれも即日完売

次に価格。民泊開始前は1K28㎡で10万円が現在は190~210万円ほどと大幅にアップ。周囲のマンションが以前同様に低迷している中、この物件のみが突出している。

「社有していた寮の部屋を民泊用に分譲したのですが、2019年9月にMXTVで取り上げられたため、同日に販売した第一期5室は完売でした。その後、第二期10戸、第三期5戸も同様の売れ行きでした」。

200万円で買って年間25万円稼いでくれれば8年間で回収できる。利回りは表面で25%。管理費、固定資産税などを引くと12.5%ほどで、手軽に確実にという意味では面白いだろう。

民泊導入により不動産価値が向上した実例

ただ、問題もある。民泊運用は180日だけ。自己使用をする人でも残り180日も使うことはあるまいと考えると、他の使い方も考えたいところだ。現状、同社では家具付きのマンスリーとしての運用を考えているという。

湯沢に限らず、管理費滞納や所有者の高齢化などで価格が下落、あまり利用されなくなっているリゾートマンションは全国に多数ある。それが新たな所有者の手に渡り、運用されるようになれば、これまでとは違う市場が生まれる。

「バブル期のリゾート購入には見栄による部分もありましたが、これからは実需で、かつシェアすることを前提にした購入、使い方が中心になっていくと考えています。買って自分で使うだけでなく、使わない時は他人に貸すことで負担を減らし、上手に活用するというやり方です。

今の70代、80代のオーナーの中にはこの考え方が理解できない人も少なくありませんが、今後、所有者が世代交替していけば民泊で稼ぎ、それによって継承できるマンションに変えていくという考えも広まっていくのではないでしょうか」。

これまで色々な意味で「お荷物」となっていた古いリゾートマンションだが、今後はその位置づけが、大きく変わっていくのかもしれない。

(参照:管理組合総会で民泊を可能にしたリゾートマンションの稼ぎっぷり

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