京都大学と住友林業は、22 年3 月から取り組んできた「国際宇宙ステーション(ISS)での木材の宇宙曝露実験」で、約10カ月間の宇宙空間における木材試験体の曝露実験が完了し、今年1月に試験体が地球に帰還したと発表した。NASA、JAXAを経て、3月に木材試験体を受理、外観や質量などを測定する1次検査の結果、木材の割れ、反り、剥がれ、行面摩擦などはなく、木材の利用拡大への可能性を再認識する結果となった。また、今回の結果を踏まえ、24年に打上げを計画している木造人工衛星1号機にはホオノキの採用を決定した。
外観のほか、質量検査においても、極端な温度変化、原子状酸素の衝突、銀河宇宙線や太陽エネルギー粒子の影響による何らかの浸食を想定していたが、予想に反し、試験体の劣化は極めて軽微で材質は安定。温度変化が大きく強力な宇宙線が飛び交う極限の宇宙環境下であっても、木材の優れた耐久性を確認した。
今後は、24年2月以降に予定している木造人工衛星の打上げに向け、最終的な調整を進めると共に、試験体の元素分析、結晶構造解析や強度試験といった詳細解析を実施うすることで、劣化のメカニズムを解明。劣化抑制技術の開発、地球上での木材利用の拡大につなげる方針だ。