Pick Up!
- 業界主要企業の24年度決算、各セグメントとも好調で大手中心に過去最高益目立つ
- 住友不の羽田空港直結ホテルがDBJグリーンビル認証最高評価
- 東急とザイマックスがフレキシブルオフィスの提携強化で利便性向上
1週間のランキング・トップ10から記者が気になる記事を3つピックアップしていきます。
まずは恒例、注目の通期決算記事「大手は軒並み過去最高 主要住宅・不動産各社の25年3月期決算 主力賃貸、分譲、インバウンドで稼ぐ 今期も好業績を見込む(2025/5/20号)」で、今年は4位にランクインしました。コロナ禍により落ち込んだ経済の緩やかな回復が継続し、業績は全体的に好調な様子が見られました。特に、大手総合ディベロッパー5社(三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産HD、野村不動産HD)はいずれも過去最高益を更新。オフィスやホテルへの需要回復と共に、上昇の続く不動産価格が業績を押し上げました。分譲マンションに関しては計上戸数の減少も一部で見られましたが、高騰する販売価格にも対応可能な層からの需要は底堅く、各社とも順調に利益を確保しています。建設費や土地価格の上昇による事業コスト増は懸念材料ですが、例えば三菱地所は、分譲マンション事業の粗利益率を近年の20%台から今回35%へと大きく伸ばしており、高付加価値化による価格転嫁が奏功している様子が見られます。なお、同じ号では「住宅大手・25年3月期決算 3社が増収、いずれも増益 戸建ての利益率改善進む」も掲載しています。3月期決算の大手住宅メーカー・ビルダーもおおむね好業績が並び、利益率の改善も見られました。自由民主党の宮沢洋一税制調査会長は、本紙インタビューで「(住宅・不動産業界は)仕入れ値を販売価格に転嫁できている珍しい業界」と評しています。とはいえ、コスト増に加え金利上昇の動きも進んでいるほか、米国の動向による世界・国内経済の先行きも不透明。足元が好業績・高利益率であっても、住宅・不動産業界の各社とも、引き続き油断のならない状況が続くことは間違いありません。
次は、各不動産会社の決算で見られた「事業の高付加価値化」に関連して、9位の「住友不、DBJグリーンビル認証のホテル版で最高評価(2025/5/21配信)」をご紹介します。住友不が手掛けた、羽田空港直結の大型複合施設内のホテル「ヴィラフォンテーヌ羽田空港」が、日本政策投資銀行のグリーンビルディング認証で最高評価の5つ星を取得したというニュースです。同認証は「グリーン」の名を冠していますが、評価内容は環境配慮だけでなく、防災性や地域との関わり、利用者の快適性など、多角的な視点から長期的な不動産価値を認定する仕組み。24年度から評価対象となったホテルは、初年度の最高評価が全国で45棟、東京都内では2棟に限られており(同社調べ)、同ホテルの高水準な仕様を裏付けています。同ホテルは主要空港直結という立地特性もあり、インバウンド観光客も念頭に、品質と利用者満足度を高めて持続的な付加価値の創出を図る狙いです。昨今は国内のホテル料金も高騰が続いていますが、ユーザーが高価格にも納得できるだけの品質は今後一層求められていくはずであり、同ホテルはその好例と言えるでしょう。
最後は、10位の「東急とザイマックスが提携強化、サテライトシェアオフィス予約・利用(2025/5/20配信)」です。コロナ禍からの回復に伴ってリモートワークの拡大が止まり、むしろ出社重視への回帰が進んでいることが、前述の決算記事の通り賃貸オフィス事業の好業績に結びついていることは確かです。一方で、先進的な企業や従業員の働き方への配慮を重視する企業においては、引き続きフレキシブルオフィスの活用も定着しており、引き続き多くの不動産会社がコワーキングスペースやシェアオフィス、サテライトオフィス等の事業を展開しています。ただし、特定施設の継続利用ではなく、必要に応じて複数施設を自由に利用できるタイプのサービスの場合、地域に捉われない多様で柔軟な働き方を支えられる半面、相当な規模の拠点数が求められる点が悩ましいところ。そこで、東急とザイマックスグループは以前から事業提携しており、サテライトシェアオフィス「NewWork」(東急)とサテライトオフィス「ZXY」(ザイマックスG)の各会員企業が双方の施設を利用できる体制を整え、双方の選択肢拡大を図ってきました。今回はその連携を強化し、「NewWork」会員企業による「ZXY」利用の手続きを簡素化し、ユーザーの利便性を向上させました。業種・業界によって偏りはあるものの、持続的な人材の確保は国内企業にとっての重要課題。求職者への訴求力、従業員の定着率、多様なバックグラウンドを持つ人材の採用といった目的のため、サテライトオフィスには引き続きある程度のニーズが見込まれ、提供する不動産会社側も工夫を凝らして、その魅力や利便性の向上を図っていくはずです。