記者A 増えたな。
記者B どうした? 白髪でも増えたか。ここのところ、コロナ禍で心労がたまっているせいか? おまえだけじゃないぞ。
A 違うよ。クレジットカード決済だよ。
B なんだ、そっちのほうか。
A インターネットで買い物をするケースが増えて、カード決済にしているから。支払額が増えたんだよ。
B 外出自粛の中では必然的に増えるだろう。これまでEC(電子商取引)を使わなかった人も使っている。
A そうした消費者動向を支えているのが物流だよ。CBRE(日本本社=東京都千代田区)の「物流施設利用に関するテナント調査2020」(6月16日発表。ウェブアンケートの形式で実施。調査期間は20年3月4日~19日。有効回答数は物流業242社、荷主企業94社)では、倉庫の新設・移転などの計画において何らかの計画があると回答した企業のうち、「面積を増やす」が67%、「拠点数を増やす」が52%を占めた。テナント企業の拡張意欲は強い。新型コロナウイルスは物流施設に影響を及ぼすというデータも出ている。
在庫量積み増し想定
B 新型コロナの影響で想定されること(複数回答)はどういうことなの?
A 中長期的な変化や影響として「在庫量の積み増し」(30%)がトップだ。コロナ禍でサプライチェーンが途絶えたことを受けて、今後の不測の事態に備えるということだ。次いで「庫内作業の自動化が加速(人的依存度を減らす)」(17%)。物流量が増大すれば、人件費も増加する傾向がある。自動化では利益率の向上が期待されている。
B でも、自動化はコロナ禍以前から求められていたことでは?
A それがコロナ禍で加速していくのさ。人的依存度を減らすのは、3密(密閉・密集・密接)の回避、ソーシャルディスタンスの確保といった新型コロナへの対策、従業員の安全配慮としても求められる。
B なるほどね。
A テクノロジーの進化が今後3年間で庫内作業に与える影響(複数回答)では、ビジュアルインスペクション(画像検品・検査)、AGV(無人搬送機)、電子情報付きのタグをはじめとしたIoT化などがそれぞれ80%前後を占めている。
B 一気に省人化やデジタル化が進む可能性がある。
A テクノロジーの使用によって「作業員数が減る」との回答は78%に及んだ。ただ、倉庫スペースが「減る」という回答は18%、「増える」という回答は37%。スペースを増やしても、テクノロジーで人件費を削減したいのさ。
B 企業にとってコスト削減は永遠のテーマだし、競合先との競争は熾烈(しれつ)だ。他の企業がコスト削減に成功したら、追随は増える。
人への安全配慮を
A コロナ禍を経験している現在では、コスト削減よりも人への安全配慮を重視してもらいたい。物流は社会のインフラだから、従事する作業員は大事だ。
B 物流が止まったら、何もできなくなるよな。
A 新型コロナの感染に対する恐怖はもはや社会的なトラウマになりつつある。仕事とはいっても、庫内環境が改善されていなければ、感染の恐怖と闘いながら、作業員は仕事を進めなければならなくなる。
B 根性論では克服できないよな。
A 今後、モノの流れをデータ化して利活用していく、その速度は高まる。テクノロジーの導入も物流を高度化していくだろう。その速度がどれだけ速くても、作業員による仕事は現状ではある程度残るだろう。
B 荷主企業の業種によっても違うだろうね。
A 新型コロナですべてが変わるという人がいるけど、そんな甘いものではない。取り組みを支えている技術の側面を見落としている。技術革新でも、できること、できないことがある。ただ、テクノロジーの導入が費用対効果を高めるのは間違いない。課題克服をコロナ禍が一気に加速させる可能性はあるよ。ただ、俺のカード決済の支払額は減らないだろうけど……。
B 無駄遣いだろうね、おまえの場合は。