GAテクノロジーズ(樋口龍社長)は10月1日、直近1年間の不動産売買における「IT重説」実施件数を発表した。これは国土交通省が推進する「個人を含む売買取引におけるITを活用した重要事項説明に係る社会実験」で、登録事業者である同社の9月30日までの実施件数は242件。全件が投資用不動産の売買契約での実施だった。
同社会実験は、不動産取引の電子化促進を目的に19年10月から大手仲介会社を含む59社で開始。1年間の実施期間が想定されていたが、コロナ禍の感染対策が求められる状況を鑑みて、継続実施となっている。現在の登録事業者数は765社(9月16日時点)。
テクノロジーで不動産ビジネスの変換を進める同社は昨年10月から不動産投資サービス「リノシーアセット」で参画。20年3月以前は重説以外の売買契約に係る書類作成や金融機関へのローン申し込み・登記等の手続きのため営業担当者が顧客のもとに出向いてサポートしていたが、新型コロナの感染者数が拡大した4月以降、希望者に対して面談から契約手続きまで完全非対面で実施。これは全体のうちの約70件(50名)となる。
署名・捺印等に課題
同社は今年9月、この50名を対象にアンケートを実施した(回答数26名)。その内訳を見ると、初めての不動産売買契約経験者が全体の6割。年代別では20代(42%)、30代(34%)、40代(15%)と続いており、回答者の全員が「不動産売買の非対面(オンライン)契約の実用化を望む」という特徴的な結果が出た。
また、今回のIT重説を活用した非対面型の手続きの中では「署名・捺印」「書類等の確認」「書面の返送」で電子化を望むという声が一定数あった。現行の社会実験では書面交付が義務付けられているIT重説に対し、「書面の電子化を望む」が約7割を占める一方、3割は「手続きは電子化してほしいが、契約書類は紙で保存したい」と回答。手続きの電子化のニーズはあるものの、契約書面を物理的に保存したいニーズが一定数あることが分かった。
同社では「コロナ禍は業界構造の転換点。他社への外販サービスなどを推進し、不動産業界のテクノロジー化に寄与していく」としている。