先輩 本格的な雨の季節を迎え、昨今の激甚化・頻発化する自然災害が頭に浮かぶ。6月上旬には全国の自治体が参加する水害対策サミットがオンライン開催された。
後輩 同時期には国から水災害リスクを踏まえた防災まちづくりのガイドラインが発表され、自治体への支援強化の姿勢も示されています。政府では21年度から5カ年で重点的かつ集中的に対策を講じる「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化計画」に着手。流域治水関連法が成立するなど、防災・減災の取り組みへのギアを上げているようですね。
先輩 行政を見れば白書の季節だが、こちらでも「減災・防災」は重要トピックスの一つ。「21年版土地白書」でも、不動産取引時における国民意識としてハザードマップ等災害情報を重視する傾向を示している。20年8月から宅建業者は重説時にハザードマップを提示し、取引の相手方に対象物件の所在地について説明することが義務付けられた。当然、不動産事業者はハザードマップで示された地域以外であっても、取引時に意識していく姿勢は不可欠だろう。
後輩 「土地白書」でもトピックスとして「国民の生命・生活を守るための土地利用等」に着目しています。具体的には「新型コロナの影響」「防災・減災対策」「東日本大震災から10年」の3点。いずれも人々の命、住まい方に大きく関わったテーマ。特に新型コロナ感染症の長期化による社会経済や国民生活への影響は甚大で、ワクチン接種が始まった現在でも今後の先行きに不透明感が漂います。
先輩 「土地白書」では、コロナ禍の影響を受けた新築マンション分譲戸数の大幅減少をはじめ、地価公示の下落や物流施設の空室率の低下などを紹介しているね。また、感染拡大で影響を受けた事業者等を支える取り組みとして、土地に関する固定資産税への影響と税制の措置についても解説している。
後輩 新型コロナがもたらした消費者の生活様式の変化もあります。テレワーク利用やDX(デジタルトランスフォーメーション)などがその最たる例ですね。
先輩 土地利用の変化として、道路を飲食スペースや販売スペースとして利用する取り組みもあったな。
後輩 国交省で、飲食店を支援する緊急措置として、テイクアウトや道路占用許可基準の緩和措置を行っています。都立公園では、臨時売店の運用を緩和し、公園の地元で営業している飲食業者による臨時営業を許可。武蔵野の森公園では、キッチンカースペースとして利用。密を避けながら、サンドイッチなどの販売が行われました。
先輩 不動産業界の変化はどうか。非対面や非接触のニーズの高まりを受け、DX化の推進が注目されている。国交省が20年5月に策定したガイドラインでも、不動産業者が講じるべき取り組み事例として非対面での内見やVR、ウェブ会議システムを活用した物件案内が示されている。不動産テックの浸透によって、顧客の非接触ニーズを満たしつつ、業務の効率化を図る例もあるようだ。
後輩 テレワークの推進によって、オフィス勤務型の働き方に変化も生まれています。在宅ワークの増加に加え、自宅と事務所の間のサテライトオフィスを活用した働き方。例えば、富士通ではフレックスタイムの適用拡大、単身赴任の解消、人事制度の改定などを含む働き方改革を推進し、既存のオフィスについても大規模な集約・統合を進めています。
先輩 働き方の変化といえば、ワーケーション・ブレジャー等の「新たな旅のスタイル」も注目を集めている。
後輩 ワーケーションは「仕事」と「休暇」を組み合わせた造語ですね。ブレジャーは「ビジネス」と「レジャー」の組み合わせで、出張等の機会を活用し、出張先などで滞在を延長して余暇を楽しむこと。この促進には、送り手となる企業側、受け手側となる地域の連携も重要となります。和歌山県では17年度から取り組みを開始。近年はICT企業誘致を推進しており、セールスフォース・ドットコムなど多くの企業がサテライトオフィスを開設し、顔認証等の実証実験も盛んに行われているようです。
先輩 危機を契機に、土地利用の方法にも工夫や柔軟性が見られた。今後の事例にも注目していきたい。