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YKK・パッシブタウン 最終街区、25年3月竣工へ 木造中高層住宅を建設 水素エネ供給システム実装

 YKKグループは12月2日、YKK不動産(東京都千代田区)が富山県黒部市で開発しているパッシブタウン第5期街区建築計画の概要を発表した。パッシブタウンは自然エネルギーを活用した街づくりで、第5期街区は最終街区となる。富山県産を中心に国産材を使用した木造中高層住宅の建設で、国内初の水素エネルギー供給システムを導入する。

 パッシブタウン第5期街区の工期は23年4月から25年3月まで。総事業費で約50億円と見積もる。木造中高層住宅の敷地面積は1万6278m2。複合型賃貸集合住宅として6~7階建てを4棟建設し、戸数は計90戸を予定する。木造と一部鉄筋コンクリート造・鉄骨造のハイブリッド構造。建物のコアの部分が鉄筋コンクリート、住戸部分が木造、重力と同じ方向で働く鉛直荷重を支える部分を鉄骨の柱とする計画だ。

 設計はオーストリアの建築家のヘルマン・カウフマン氏が担う。カウフマン氏の起用について、YKK不動産の八木繁和取締役は「欧州で木造建築物の実績がある。木造建築のシンプルなデザイン、設備を収めるディテールにも美しさがある。オーストリアの建築家であるため、断熱にも詳しい。カーボンニュートラルな建築ができる」と期待を寄せる。木造中高層住宅の建設は北陸初。50~60年活用することで、CO2の長期固定化を図る。第5期街区の基本設計(構造・設備)・実施設計を担う竹中工務店の山口広嗣常務執行役員は「富山の木を主体とした日本の木材を組み合わせ、日本の関連法規、レギュレーションの中でいかに実現するかが当社の大きな役割」と述べた。

 第5期街区には水素エネルギー供給システムを実装する。海外では実例があるが、国内では初めての試みだ。北陸の冬は日射量の低下、積雪により太陽光発電の発電量が減少する。水素エネ供給システムの導入により、春から秋にかけて蓄積した再生可能エネルギーを冬に活用するシーズンシフトを行う。

 春から秋にかけての太陽光発電の余剰電力で水を電気分解して水素を生成。その水素を「吸蔵合金」と呼ばれる特殊な金属に貯蔵する仕組みだ。冬に合金から水素を取り出し、燃料電池で発電し、住戸に電力を供給する。水素の生成、水素を電気に戻す過程で発生する熱は給湯に利用する。

 YKK創業家の出身で、YKK不動産の会長を務める吉田忠裕氏は「今まで長い間、検討に検討を重ねてきた。いよいよこの時が来た。われわれとしてはスタートであり、レベルの高いものをつくり上げていきたい」と述べた。パッシブタウンは13年にマスタープランを発表。周囲の環境や自然の力を活用し、エネルギー消費を減らす街づくりを進めている。第5期街区が完成すれば全街区で計207戸となる。