6月15日に通常国会が閉会し、7月の参議院選挙に向けた論戦が本格化している。争点はウクライナ情勢や物価高とされる。国会会期終盤の6月7日には「規制改革実施計画」が閣議決定。政府は、国民生活の安定・向上、経済活性化等に寄与する規制改革の着実な実行を目指す方針だ。デジタルやグリーン分野はもとより、老朽化した区分所有建物の再生円滑化やスーパーシティ構想など、住宅・不動産業に関係する項目も含まれる。
同計画は、国内外の情勢変化に適合した規制のあり方を模索し、実現を図るためのもの。これまで内閣総理大臣の諮問機関である規制改革推進会議(19年10月設置)で、20年7月、21年6月に答申が提出されてきたが、その後の継続検討により「規制改革推進に関する答申」が22年5月27日に内閣総理大臣に提出。これらの答申等により示された規制改革事項についてそれぞれ期限を定め、着実な実施につなげるのが同計画だ。
人への投資を促進すると共に、新たな成長産業を創出し経済成長を生み出す狙い。分野横断的な取り組みでは、デジタル原則に照らした規制の横断的な見直し等を推進する。例えば、地方公共団体等と事業者間の手続きの標準化・デジタル化の対象として、「宅地建物取引業の免許の変更、更新等」が含まれている。また、行政手続きにおけるオンライン利用率を大胆に引き上げる取り組みの中には、「不動産登記関連手続き」(法務省)や「長期優良住宅建築等計画の認定」(国交省)が含まれている。
国家戦略特区に関しては、データの連携や先端的サービスの実施を通じて地域課題の解決を目指す。スーパーシティ型国家戦略特区とデジタル田園健康特区について、今夏をめどに指定区域ごとに区域会議を立ち上げる。今後の規制改革の実現に向け、規制所管省庁とおおむね合意している項目の早期具体化、合意できていない項目の調整の加速、地方公共団体と連携した新たな規制改革事項の検討に取り組む方針だ。
個別分野として「スタートアップ・イノベーション」「グリーン」など規制改革の重点6分野を定める。例えば、「老朽化や被災した区分所有建物の再生の円滑化に向けた規制改革の推進」では、所管府省の法務省と国交省が区分所有法制の見直しに向けた論点整理を進める。22年度中の早期にとりまとめを行い、法制審議会への諮問など具体的措置を講ずる方針だ。更に、区分所有法制研究会において、「建替え決議がされた場合に専有部分にかかる賃貸借契約を円滑に終了させるための仕組み」などに関する論点整理を行い、具体的措置につなげることとしている。
省エネ性能の向上も
このほか、「グリーン」分野の中では住宅・建築物分野におけるエネルギー性能の向上に向けた規制・制度のあり方として、「省エネ基準の適合義務化・基準強化」「省エネ性能表示の推進」など5項目が盛り込まれている。なお、関係府省および規制改革推進会議は、計画のフォローアップを行い、その状況について22年度末時点で整理し、公表するものとしている。