国土交通省は、7月15日に第24回国土審議会を開催し、国土形成計画(全国計画)中間とりまとめ等の報告を行った。同とりまとめでは、〝時代の転換点〟を迎えた日本の国土の課題を解決するため、官民共創、デジタルの発想などの基本原理を整理。取り組みの重点分野と方向性を示し、23年半ばの最終とりまとめへ向けて、具体的な国土像を提示していく覚悟を記した。
「国土形成計画」は、国土形成計画法に基づき策定される総合的かつ長期的な国土のあり方を示す計画。これまでに08年と15年の2回、策定されている。
今回の中間とりまとめでは、コロナ禍による生活・経済の変化やデジタルの進展などを踏まえ、令和の新しい国土づくりの方向性を示す計画の策定を目指す。国土審議会の下に設置された計画部会(増田寛也部会長)で、未来を担う次世代に伝わるメッセージおよび「人々の活動」分野に力点を置くことを念頭に、21年9月以降、12回にわたって議論が行われた。
とりまとめのポイントは、人口減少・少子高齢化や巨大災害リスクへの対応など国土の様々な課題に対し、新たな発想による令和版の解決の原理を取り入れたこと。すなわち「民の力を最大限発揮する官民共創」「デジタルの徹底活用」「生活者・事業者の利便の最適化」「分野の垣根を越えること(横串の発想)」――の4つを基本原理とした上で、(1)地域生活圏、(2)スーパー・メガリージョンの進化、(3)令和の産業再配置、(4)国土の適正な利用・管理(新たな国土利用計画)の4つを重点的に取り組む分野と位置付けた。
具体的には、地域の関係者がデジタルを活用して自らデザインする新たな生活圏として「地域生活圏」を構築するため、関係人口の拡大・深化や女性活躍など多様な人材の確保を図ると共に、多様なニーズに応じあらゆる暮らし方と経済活動を可能にする世界唯一の新たな大都市圏の創出を目指す。また、カーボンニュートラルに対応するための産業の構造転換、巨大災害リスク軽減を考慮した産業再配置により、国土機能を分散化すると共に、地方にとっての魅力向上の契機とする。更に、住民自らが人口減少下の適正な土地の利用・管理の方向性を示す管理構想の推進方策を強化、全国展開していくことで、「持続可能な国土の形成」「地方から全国へとボトムアップの成長」「東京一極集中の是正」の実現を目指す。今後は23年半ばの計画策定に向け、議論を深める。
委員からは「4つの方向性の軸を整理し全体のグランドデザインを示すべき」や「取り組みの工程表を示すべき」などの意見が出された。また、東京一極集中是正や自然資本のマネジメントに関する議論を深めることが必要との指摘もなされた。
地方活性の未来像明確に
同省の木村実国土政策局長は、同計画の最終とりまとめへ向けて「計画の軸足を地域、地方に置いている点は今回も同様だ。スーパー・メガリージョンの議論についても、どのように大都市圏の中間域や外側の地域の活性化につなげるか力点を置いて考えていくと共に、地域生活圏については〝誰が何をする〟という主体論が重要になる。他省庁、民間の協力を得ながら進めていく」と述べた。
結びのあいさつで斉藤鉄夫国土交通大臣は、「国土を取り巻く環境課題に対応した新たな国土形成計画の策定に向けて、基本的な方向性を示してくれた」と評価。政府一丸となって、23年の計画策定に向けて取り組んでいくことが重要との考えを示した。