グッドデザイン賞を「デザインを言語化するためのトレーニング」と位置付けているシマダグループでは、企業研修施設をホテルと介護施設の2つの用途に再構築した「葉山 うみのホテル」と、それぞれの住戸が独立した賃貸住宅「白蓮居」の2作品が選ばれ、9年連続累計23作品の受賞となった。同社建築事業部の須藤潤部長に話を聞いた。
「葉山 うみのホテル」は、都心から自動車で約1時間の立地にある。海岸沿いに建つ、役目を終えた企業の研修施設を「ホテル+介護」へと再構築し、旅行宿泊者や地域住民、また介護を必要とする高齢者のための居場所として再生した。
シマダグループ内にホテル、介護の運営会社があり、グループの強みを最大限に発揮できる建物として改修計画をスタートした。
改修ではエレベータを新設することで縦動線を増やし、ホテル客室をはじめ、簡易宿所やデイサービスを併設した。建物維持のための外壁修繕や設備更新なども同時に行っている。
ホテルラウンジである「SAND BAR」は、宿泊者だけでなく、介護入居者や地元住民の集会場、イベント会場として利用される。ワーケーションとして活用する旅行者や、宿泊者も多い。更に町内と協定を結び、津波や台風時の避難場所として開放しており、防災の拠点にもなっている。
また運営スタッフによるビーチクリーンの参加や、葉山芸術祭に協賛し、地域に根付いた積極的な活動を意識している。既存の建物に新たな価値を見出し、地元住民にも利用され、葉山町全体の価値の向上につながる建物を目指した。
館内は海を感じる内装とし、複数の地元アーティストによる作品を随所に配置している。葉山のビーチで収集した流木から生み出されたアート照明は、ホテルエントランスの象徴として、大空間の中央に配置した。アーティストにとっても情報発信の場として活用され、ネットワークの拠点となる地域に開かれた場所として利用される。
今回受賞した、ホテルと介護施設を組み合わせた「葉山 うみのホテル」や、昨年ベスト100に選ばれた住居とオフィスを組み合わせた「ROPPONGI TERRACE」のように、複数の用途を組み合わせて、今後も魅力的な新しい価値観を創造していきたいと考えている。