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道路所有者への対応欠かせず ~畑中学 取引実践ポイント~ 「私道通行掘削の承諾書」 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(57)

 前面道路が私道の場合、通行や掘削の承諾書(以下、承諾書という)を道路所有者から取得するのが基本だ。理由は道路所有者から徒歩や車での通行および水道管などライフラインの埋設管工事に伴う掘削について「そんなことは承諾していない」とトラブルにならないように防止するためだ。事前に書面で承諾を得る必要がある。

 なお掘削については埋設管工事の会社や市区町村役場にも求められることが多い。新築工事などで埋設管も新たにする場合は取得が必須と考えておこう。

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 承諾書を得る私道の範囲は公道までつながる私道の全てとなる。公図をよく見て公道までの筆を持つ土地所有者に承諾書を得ていく。

 承諾書の体裁は自由。一般的にはA4サイズで1枚程度に(1)通行を許可すること、(2)埋設管工事のために掘削を許可すること、(3)不動産を売却しても買主である第三者に承継すること、などの文言を記載する。その上で土地所有者の署名捺印(認印でOK)をいただくものが多いだろう。2部作成して1部は不動産の所有者、もう1部は道路所有者、写しは不動産会社で保管となる。

 取得の際は土地所有者にとって承諾は「対応するのが面倒くさい(メリットがない)こと」を意識して動いていく。決して「承諾して当然だ」と思わず、土地所有者にお願いすることが肝要だ。土地所有者に敬遠されて承諾書を得られなかったら大変だ。承諾書を得られないことも多い。道路所有者が高齢者だと理解を得て署名捺印してくれるのに一苦労となるケースが多い。一度承諾をしてしまうと不利益を被るかもしれない、何か裏があるのではないか、勝手にサインすると子供に怒られるなど、理由は様々だが、承諾できないと断られやすい。その場合は時間をかけてお願いしていくしかない。

 筆者も承諾書を取りに大地主であるご年配の道路所有者に手土産をもって伺ったが「今までそんな承諾書とやらにサインしたことがない」とあっさり断られてしまったことがある。最終的にはその道路所有者の親戚を通じて承諾書を得ることに成功したが、急かしてしまうと「何か裏があるのでは?」と変に勘繰られて承諾が得られないので、時間をかけてお願いをしていった。「この承諾により何か問題があってもすべての責任は不動産所有者が取る」との一文追加で「親戚の顔を立てて」とようやく承諾が得られた。取得に厳しいケースがあることに注意しよう。

 手土産は必須かと思う。道路所有者の手間暇をおかけする話でもあるので、ご協力の御礼は持参した方がスムーズに運ぶだろう。筆者は持ち運びに便利なクオカードか、重要なときは菓子折りとなることが多い。この点は人それぞれで判断するところだ。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。