資本の効率や業務の効率が迫れた。こうした日本特有の企業改革が進んだことが日本の不動産投資マーケットにも波及している。
▼オフィス市況も回復期に入った。在宅勤務から出社要請が後押しする。JLLによれば、世界主要都市のオフィス回帰率は東京が80%まで回復しているが、サンフランシスコの45%やロサンゼルスの47%、ニューヨークの51%と比べればオフィス需要の回復力は強い。
▼東京都心の空室率も低い。人流回復のほか人材獲得に向けてステータスと利便性の高いビルが選ばれている。丸の内・大手町のAグレードビルは2%を下回る空室率だ。IT企業に人気の渋谷も同様の低水準。半面、麻布台ヒルズが大きな空室を抱えたことで六本木・赤坂の空室率は5.3%と高めだ。目を引くのが渋谷だ。渋谷駅周辺の大再開発がヒト・モノ・カネを引き付けている。
▼オフィス市場の勢力図が変わるのか。ビジネス街区の代名詞だった丸の内・大手町に取って代わって渋谷の時代が到来する。地元ではそんな声もささやかれる。だが、専門家の話を総合するとそうはならない。渋谷区と港区ではオフィスの市場規模が全く違う。港区は全体がビジネス街だが、渋谷区は渋谷駅周辺にとどまり、就業人口の収容率は港区が断トツだからだ。いずれにしろ欧米のオフィス市場が落ち込んでいる中で、日本の回復は海外資金を取り込む好機だと言えよう。