総合

大言小語 身の丈の選択

 本号でまとめた24年度売買仲介実績を見ると、富裕層や法人取引の活発さにより、主要不動産流通各社の業績はおおむね好調だった。他方、物件価格の高騰は一般実需層の動きに影響を与えている。ライフルの最近の調査では、不動産売却査定の依頼理由が「相続」「所有者が高齢」といった高齢化を背景としたものと、「金銭的理由」で増加していることを指摘する。

 ▼高齢化については、〝実家じまい〟の関心の高まりもあり、家族構成にあった物件への住み替えや子世代への引き継ぎを後押しする。自宅を元手に新たな生活設計を実現する資金とするなど、持ち家が資産として活躍する。不動産各社も様々な対応で切磋琢磨している中、自宅売却に伴う高齢者トラブルの増加を指摘する声も聞かれる。需要を下支えするため健全なサービス提供に一層努めていくことが求められる。

 ▼一方、金銭的理由による売却依頼には比較的〝現役世代〟も含まれる印象だ。世帯年収の何倍にも及ぶ住宅ローンと厳しい返済計画を組んだ上に、昨今の物価高や住宅ローン金利の上昇懸念が重なり、家計を圧迫する。売却によって新たな生活設計を描く資金が得られればいいが、売り損となるリスクも考慮した慎重な選択が求められる。ともあれ、住宅の売買にはライフステージの変化が伴いやすい。一般実需層にとっては資産性にばかり目を向けず、身の丈の住まいを再考する機会としたいところだ。