国土交通省が、新築マンション取引実態の調査結果を公表した。調査内容は本紙記事をご覧いただくとして、取材現場で気になったのは、「外国人の高値買いが物件価格高騰の原因」という前提で担当者に質問を浴びせる複数メディアの姿勢だ。今回の調査は取引主体の国籍に触れていないが、過失か故意か、メディア側が「外国人」と表現し、担当者に「国外に在住する人」と改められる場面も多かった。
▼こうした「ストーリー」設定自体は珍しくなく、非難されるものでもない。受け手の心に訴えかける力が強いためで、報道に限らず、マーケティング等の分野でも推奨される。例えば住宅分野でも、客観的な性能面よりも、「その家で暮らすことの魅力」をストーリー仕立てで訴求したほうが効果的な場面は多いだろう。
▼とはいえ、事実よりもストーリーを優先するような姿勢は考え物だ。更に、ストーリーはネガティブな方向にも強く作用する。典型例は心理的瑕疵(かし)物件ではないか。とある民間調査では、いわゆる〝事故物件〟を忌避する理由の1位が「とにかく怖い」だったが、マイナスイメージの強いコンテンツ等の影響は否めまい。
▼目を引くストーリーも結構だが、客観的事実はそれを支える土台だ。マンションも、基礎・土台が確かでなければ、建物の魅力は文字通り台無しだろう。〝上物〟のストーリーだけにこだわる姿勢は危うい。




