住新記者のひとりごと

インスペクションの価値を考える

正体がわからない

 国土交通省が有識者会議を設置して、検討を進めてきた中古住宅インスペクションのガイドライン(以下、指針)案がまとまりました。住宅新報の4月30日号・1面〝既存住宅インスペクション 国交省・ガイドライン最終案〟では、その概要などを紹介しています。

 遡ること1年半前、「色んなサービスが出てきているけど、そもそもインスペクションって何だろう」と思い、取材を進めました。〝インスペクションの正体〟(住宅新報12年2月14日号〜2月28日号)と銘打って、連載しています。タイトルで大きく出たものの、取材を終えてわかったことを正直に言えば、「本当に色々な取り組み方があって、正体がわからない」ということでした。

 一方で、「正体がわからない」ということもある意味では正解だったのかもしれません。国交省がインスペクション指針を策定する方針を示した頃(12年3月に策定した「中古住宅・リフォームトータルプラン」で〝インスペクション指針の策定〟と盛り込まれました)、指針策定の考え方について担当官に尋ねると、「現状、何か問題が起こっているわけではないが、消費者が安心して中古住宅を取り引きするために必要なツール。インスペクション市場を育成するために策定する。一方で、指針自体を1つのラインで示せるかわからない。まずは実態把握を進めたい」と話されていたことを覚えています。

検査結果の意義

 あれから時間が経過して、中古市場における安心・安全では、「保証」サービスが注目を集めています。住宅新報12年10月16日号の1面は、〝中古住宅保証で安心 流通大手が取り組み開始〟。以降、同様の取り組みが広がっています。いずれも、一定の検査を行い、そのうえで保証するスキームですが、どちらかといえば、「検査」よりも「保証」という部分に焦点が当てられているように思います。

 ここで、改めて考えたいのが、検査の意味です。中古住宅購入者にとって、保証はありがたいサービスだと思いますが、それ以上に望むものはないか。それは、そもそも不具合自体が起こらないことだと思います。起こる可能性があるかないかを示してもらい、可能性があるのなら、あらかじめ対応できるにこしたことはないと思います。そう考えると、「検査」自体の役割が、もっと注目されても良いと思います。誤解をおそれずに言えば、多くの検査実績や経験をもつインスペクターによる「良好」という検査結果や「○○を補修すべき」といったアドバイスは、たとえ保証という出口がなくても、それ自体、価値があるようにも思います。

 また、インスペクションの結果は、消費者に安心を与える以外の役割も期待されています。国交省では、銀行による担保評価としての活用を検討課題にしています。

 ガイドラインは5月にも公表される見通しです。公表を通じて、検査そのものの価値に多くの注目が集まること、認知されていくことを期待したいところです。   (編集部Y)