林市長 都市は千客万来にならないと、活性化しません。市長を2年7カ月やってみて、改めて横浜は、観光資源や文化芸術的な資源、歴史的資源が豊富な都市であると思います。もう一つ、社会貢献活動などが活発な土地柄で、企業の皆さんも企業市民という意識が大変強い。民間と行政は手を携えて、どうしたら横浜に人が呼べるのかを考え、実践していきたい。そこで考えたのが横浜芸術アクション事業です。
世界の一流都市は芸術を観光の切り札としていて、それを経済産業だと考えています。最近では、モスクワのボリショイ劇場が6年間で500億円をかけてリニューアルしました。大統領がこれは国家戦略だと言い切っています。オープニング公演では世界中のバレエファンでチケットは売り切れ。また、ドイツのハンブルグバレエ団も大人気だと聞いています。
そうした文化芸術が観光の目玉になるという考え方が横浜は少し弱い。
国際都市として海外からお客様を呼ぶときに、目玉とするものがあるのか。言語が通じなくてもみんなで楽しめるものは何かと考えたとき、「それはダンスだ」ということで、7月20日から10月6日までダンスフェスティバル『Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2012』を開催します。リストさんには、横浜市が運営をお願いしている横浜マリンタワーを単なる建築物ではなく、違った形で表現していただきたいと思います。
横浜市には、長い時間かけてつくってきた「クリエイティブシティ」の都市づくりなど様々な都市戦略があります。評価もされていますが、私は人がわくわくどきどきするもの、感情に響くものも大事だと思っています。心で感動してこそ、その都市が好きになるわけですが、その点がまだ弱い。昨年、横浜美術館などを会場に現代アートの国際展『ヨコハマトリエンナーレ2011』を開催し、現代アートが身近なものになったとの評価もいただきました。マリンタワーも含め、これが「横浜だ」と思わせるものがたくさんないといけない。
北見社長 横浜のわくわく感をどう演出していくか、一市民、一企業として考えると、バッグのキタムラの北村宏社長の言葉に共感しています。「バッグを売るためには、横浜が元気にならなければならない。そのためには日本が元気にならないと。バッグそのものの販売よりも、周りのことが大事だ」と言われ、その通りだと思っています。
不動産の場合も、人が集まらなければ、地価は絶対に上がりません。活性化した、にぎやかな街でないと人は来ません。そうした街をつくるために、当社では、地元と一緒に横浜の旧市街地活性化イベント「Y153」に取り組んでいるのをはじめ、各地のスポーツイベントをスポンサーになって応援しています。少年野球、ソフトボール、サッカーのほか、湘南ではビーチスポーツも。我々の仕事は、地元の人たちの意見を聞きながら家を建ていくことですから、まず地元に役立つものを、という考え方です。
林市長 応援するのはスポーツだけでなく、芸術もお願いしたいですね。
横浜芸術アクション事業の特徴は、横浜のロケーションを生かし、横浜でなければ見られないものにすること。フェスティバルでは赤レンガ倉庫の野外に巨大な野外ステージを作り、クラシックバレエの公演を行います。バレエを見た後で、箱根に旅行できないかとの声もあります。魅力的なところはたくさんますので、それらを結びつけていくことが大事です。