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大手ハウスメーカー・戸建てプラン 在宅勤務の長期化に対応 仕事に適した空間提案に拍車

 新型コロナウイルスの影響により在宅勤務が長期化、本格化している。大手ハウスメーカーは従来から、共働きの世帯の子育てを踏まえ、戸建て住宅において在宅勤務スペースを提案してきた。6月以降、大手ハウスメーカーでは在宅勤務対応を強化した商品の発売が相次いだ。新たな商品化を行うことなく、ウェブで情報を発信するメーカーもある。コンセプトには共通項も見られ、顧客のニーズを反映している。(古賀和之)

 リクルート住まいカンパニーが5月25日に公表した「コロナ禍を受けたテレワークの実態調査」では、会社員・公務員のテレワーク実施率は47%。19年11月調査時と比較すると30ポイントの増加を示した(調査期間は4月17~20日。1都8県の20~64歳の男女が対象。スクリーニングサンプルは9570件)。在宅勤務の普及がうかがえる。

6月以降、商品化相次ぐ

 大手ハウスメーカーは在宅勤務対応のプラン提案を強化。6月1日には大和ハウス工業が新築戸建てを対象に2つのプランを投入した。

 「緊急事態宣言前後ではテレワークに関する資料請求は倍増している」(積水化学工業住宅カンパニー)と、顧客の関心は高い。注文住宅で在宅勤務対応プランやアイデアを採用した新商品は、7月9日にミサワホームが、7月18日に積水化学工業住宅C、三井ホームが発売した。

 受注、顧客の反応では、大和ハウスのプラン採用は6月が56棟、7月が44棟と堅調な推移を見せる。ミサワホームは東京オリンピックを踏まえ、年明けから在宅勤務対応の提案を開始していた。それが下地となり新商品の7月初月の受注は50棟に近く、好調なスタートを切った。また、三井ホームでは「新商品のホームページ閲覧数は堅調。モデルハウス来場者の反響も総じて良好」という。

積水ハウスは大空間で

 8月4日には、積水ハウスがアフターコロナに対応したライフスタイル提案を盛り込んだ新コンセプトモデル「ファミリースイートおうちプレミアム」を発売した。これは間仕切りのない大空間リビング「ファミリースイート」を生かしたもの。新モデルでは大空間を1階だけでなく、2階にも展開できる。顧客自身が理想のプランを描くためのウェブツールも提供する。

 多彩な提案が盛り込まれており、「在宅ワーク」では集中コーナーから寝室の活用といった空間活用を提案する。

 一方、商品化を行わず、情報発信を強化したメーカーもある。旭化成ホームズは4月下旬から、ウェブ上でワークスペースのスタイルを紹介。住友林業はゴールデンウィークから、ウェブ上に特設ページ「木ノイエ WORKING STYLE」を開設している。

 パナソニックホームズは6月17日から、戸建て全商品を対象にした新・生活様式「おうち時間を楽しもう!」の提案を開始し、ワークスペースとして個室、半個室などを盛り込む。

 大手ハウスメーカーでは20年夏季に開催予定だった東京オリンピックを踏まえ、テレワーク対応のプランを提案していたケースはあった。ただ、新型コロナの感染拡大が懸念された緊急事態宣言発令以前で、新商品投入は見られなかった。注文住宅は自由設計であり、技術面や予算の課題をクリアすれば、従来のプランを駆使して顧客の希望する間取りに対応できるからだ。今回の商品化は本格化する在宅勤務に対応した動きになる。

アイデアに共通項

 各メーカーのアイデアやコンセプトに共通項がある。集中力を高める個室・半個室といった、仕事に適した〝クローズドな空間〟の訴求がその一つ。大空間でのスペース活用を提案する積水ハウスも間仕切り壁の設置により集中力を高めるといったアイデアを盛り込む。オンライン会議などを想定し、防音ドアといった特別仕様も用意する。

 一方、ミサワホームは新商品で従来から取り扱っている在宅ワーク空間「ミニラボ」を提案するが、「ミニラボ」はこれまで2畳程度の広さが一般的だった。新商品では4畳半~6畳の広さを提案し、オフィス的な活用も想定する。

 個室・半個室を含め、複数の在宅勤務スペースを提案する傾向も見える。夫婦そろっての在宅勤務、子供の世話をする時間の長時間化などを反映したものと言える。

 在宅勤務対応プランの定着は日本社会の動向にもよる。通勤時間に縛られない在宅勤務がどの程度定着するか。それが敷地の広さや部屋数の増加を左右し、同プランの定着にも影響を与える。ただ、在宅勤務は働き方改革に沿っており、今後も同プランへの関心は高まると見られている。

住友林業 「木ノイエ WORKING STYLE」

寝室活用、トータル提案も

 新たな商品化を行わずに在宅勤務対応のプラン提案を行っている住友林業。ウェブ上で「木ノイエ WORKING STYLE」として情報を発信。サイトでは(1)寝室と程よくつながる、(2)夫婦独立(寝室とワークスペースを夫婦それぞれに設計)、(3)吹き抜けで家族とつながる、(4)独立感ある寝室コーナー、(5)家事コーナー――といった5つのスタイルを紹介している。

 (1)~(4)のスタイルはすべて寝室を活用したもの。緊急事態宣言下の在宅勤務状況を反映する。住宅・建築事業本部営業推進部の中野邦彦マネージャーは「自宅に子供がいる中で、どういったスペースで仕事ができるかを考えた。昼間使われない寝室のスペースを活用して、なおかつ建物自体の大きさを広げずに、できるだけお客様のコストアップにならないようにと考えたもの」と説明する。木目の持つ集中力向上効果、リラックス効果などを紹介するのも同社ならではの取り組みだ。

 同本部技術商品開発部の宮脇亮次長は「営業担当、設計担当、インテリアコーディネーター、外構の緑化担当者などがチームを組む形で、スペースや部材だけではなく、トータルでワーキングスタイルを提案できる」と述べる。従来から、顧客の要望に応じて、トータルコーディネートのチームを組んできた。今回のプランでは、木質感に映えるグリーンを提供できるのは強み。グループ会社の住友林業緑化は植物の選定に優れ、ワークスペースの生産性向上やリラックス効果を促す。