国土交通省は4月26日、新たな国土形成計画の策定に向けて、国土審議会第9回計画部会を開催した。今回のテーマは「人口減少下の土地の利用・管理」。同計画と一体の検討が求められる「国土利用計画」の新たな方向性について、DXや課題横断的な解決手法など5つの論点を中心に意見交換。バランス感覚を備えた国土マネジメントの重要性について確認した。
従来の国土利用計画では、土地需要の量的調整、国土利用の質的向上という2つの課題を提示。しかし、人口減少・高齢化を踏まえ、15年策定の現行計画では、「国土の管理水準等の低下」「自然環境と美しい景観等の悪化」「災害に対してぜい弱な国土」の3点が課題に挙げられている。
第9回計画部会ではまず、事務局から「国土利用計画」について国土形成計画と一体的に検討し、策定されるべきものという意義が示された。その上で、改定に向けては、関連分野での課題の深刻化や新たな政策目標が生じた場合も、常に全体最適を実現する観点から国土利用の方向性を示すこととした。
事務局では、今後の検討の方向性として、(1)DXを前提とした国土利用、(2)課題横断的な解決手法としての管理構想の推進など5点を提示した。(1)に関しては、デジタル田園都市国家構想が実現した国土における土地の利用と管理のあり方の必要性を指摘。具体的には、デジタル空間を前提とした地域生活圏によって、地方での生活を維持・継続していく上では、その土台となる土地についても徹底的な管理の充実を図る必要があるとした。
(2)では、中山間地域の集落等を重点的に、地域管理構想を策定し、国土利用をめぐる諸課題の横断的な解決に向けた取り組みを実行していく必要があると指摘。他方、地域管理構想などのベースとなる国土利用計画(市町村計画)の策定が不十分な現状を指摘した上で、市町村計画と管理構想について一体的に推進すべき旨を国土利用計画(全国計画)に位置付けると共に、管理構想の更なる推進方策を検討する方針だ。
このほか、(3)地域社会全体の持続性を重視した国土利用、(4)地理的条件による災害リスクを踏まえた国土利用、(5)危機への備えを最優先とする国土利用について、対応の方向性を強化・発展させていく必要があるとした。
緊迫感高めて
委員からは、「人口減少下では土地の公共性の視点が重要になる」や「民間の動機付けを促進する制度設計が公的な成果にもつながる」といった意見のほか、横断的な解決手法として「様々な主体から出される計画が統合的に進められることが重要」との指摘も続いた。委員の家田仁政策研究大学院大学特別教授は、バランス感覚を持った国土管理の徹底、マネジメントが不可欠とした上で、「従来は緊迫感に欠けてきた国土利用計画だが、今回は実行可能とするための人的、経済的資源を示すべき」と強調した。