マンション・開発・経営

アーバネットコーポレーション 田中敦新社長に聞く アセット多様化視野に 仕入れ対応の新部署で結果を

 9月28日付で、アーバネットコーポレーションの新社長に就任した田中敦氏。これまで、仕入れや企画・開発、販売など主力事業の全体で実務に携わってきた経験を強みとしており、今後は更に広い視野で同社のかじを取っていく責務を担う。加えて、経営陣の〝若返り〟を一つの柱とした今回の体制刷新を踏まえ、就任の受け止めや抱負、当面の方針や今後のビジョンなどについて聞いた。(聞き手・佐藤順真)

 新社長に抜てきされ、「創業者で、今回会長兼CEOに就いた服部信治前社長からバトンを引き継ぎ、また次世代につないでいくことが責務と受け止めている。緊張はしているが、おごらず謙虚に、かつ前向きに取り組んでいきたい」と思いを述べる。また「当面は服部会長と二人三脚で、従来の方針を踏襲しながら事業を進めていく」と強調。同時に、「当社に〝新しい血〟を入れていくため、(服部会長と)前向きな議論を交わしながら、時代の一歩先、半歩先をいく事業を具現化していきたい」と意欲を見せた。

 同社の創業初年度に入社し、時代に合わせた事業形態の変革なども経験しながら、同社の歴史と共に歩んできた。かつての設計企画や仲介事業から、現在主力とする投資用マンションまで、「特に『現業』分野では仕入れから販売まで全体に携わってきた」と自負する。

 近年は比較的「安定路線が続いてきた」中で、「会社としてもう一段強くなるため、どのように新たな要素を取り入れるか、どのように変化していくかが今後のテーマ」と捉える。その中で、これまで培ってきた経験や人脈を生かし、業界の横のつながりでビジネスを強化していくことが、自身に期待された役割の一つと認識している。

 具体的な事業としては、引き続き投資用マンションを主軸としつつ、「学生向けマンションやシニア系など、立地とニーズに応じてアセットタイプの追加を検討していきたい」として、新たなアプローチも想定。また時代の潮流を踏まえ、「投資物件の販売先として重要な、外資を含むファンド等のニーズに対応するためにも、ZEH-Mへの取り組みもしっかりと継続しなければ」との考えを示す。

 また利回りを最重視する投資用物件の領域でも、アートを取り入れた物件開発など独自性のある企画が付加価値となり、差別化や競争力向上を後押ししている点を現場で実感してきた。「(マンションの企画・仕様など)ものづくりに一定の評価を得ている点は当社の強みの一つだ。これをもう一段進めていくため、ニーズをより深掘りして分析し、企画を考え抜いて具現化できる人材を育成していくことも、これからの大きなテーマとなるだろう」として、人材育成や組織の強化も重視していく構えだ。

 他方、足元の事業環境については「一言で言えば〝不透明〟。当社の業績自体は順調に推移しているものの、海外との温度差が大きいことも(リーマン・ショックなど)これまでの変動期と異なる点で、手探りで事業を進めざるを得ない状況だ」と気を引き締める。

 仕入れの状況についても「鈍化している」と率直に話す。そこで「業界各社とも同様だと思うが、流通物件を中心としつつも、〝土地をつくる〟ことやその内製化の必要性が高まっており、様々な土地取得のアプローチが求められている」とする。またそうした状況を受けて前期に権利調整の部署を設けており、「今期は必ず結果を出していきたい」と力を込めて語った。