iYell(東京都渋谷区)が提供する住宅ローン業務代行サービス「いえーる ダンドリ」は当初、中小不動産仲介会社向けだったが、今では大手不動産仲介会社でも導入が進む。なぜか。生産性が向上して売り上げが伸び、外注費を上回るメリットがある。業務効率化でスマートな働き方を示せるため、大手も悩む人材採用難の時代に、若手人材を惹きつけるからだ。
消費者は、限られた中から選ぶよりも豊富な商品数から選びたい。ただ、数が多過ぎると目移りする。第三者的立場からの客観的な意見を聞ければ、自身だけで選ぶよりも最適な商品を選択できた満足感や、数多くの中から厳選したという納得感が高まる。
例えば、街中でタクシーに乗る際には、安全安心に最短の経路で着きたい。昔は、道に詳しいドライバーが考える経路に頼ればよかったが、時代は変わった。カーナビゲーションシステムが普及しており、時々刻々と変わる道路交通情報も加味し、複数の中から最適な経路を選べる。人の頭で道に熟知する属人化の要素が減り、ドライバーの採用が比較的簡単になっている。
不動産業界でも住宅ローン商品の選択がある。インターネットの普及で誰でも簡単に情報は得られるが、最適な商品選びに迷う。その際に力強い相談先として不動産売買仲介店舗の営業担当者(以下・営業担当者)が頼りになる。
時間的な制約
ただ、現在の不動産業務は煩雑さが増して負荷が高まっている。業務の合間をぬって複数の金融機関に問い合わせて最適な商品を提示する。その住宅ローン商品は、昔よりも増え続け、今や1万種類を超える。すべての商品知識を得てアップデートし続けるのは至難の業となる。営業担当者は、住宅購入検討者の機微を感じ取って本来の住まいの提案業務に注力をしたいが、時間的な制約がある。住宅購入検討者、営業担当者、金融機関のそれぞれの都合よい日程は限られる。丁寧に説明をしたくても、時間に追われて急いで進行してしまう。業務代行サービス事業者は専従のために、顧客の都合のよい時間に合わせて対応ができる。
住宅ローン業務代行サービス「いえーる ダンドリ」を提供するiYell(東京都渋谷区)は、月約1000件の問い合わせに応じ、商品の情報を日々更新する。その知見やノウハウで最短期間で提案できる強みがある。時間に追われ、できづらかった審査結果の細かな内容も、同社が住宅購入検討者に直接、または、営業担当者を通じて説明できる。書類の手戻りの手間もなくなる(イメージ図)。
外注化は単純に楽をするためではない。病院はチーム医療体制で専門医がそれぞれの役割で患者に向き合う。不動産会社も司法書士や税理士、インスペクターと連携して業務を遂行する。それぞれが専門領域に注力し、きめ細やかな対応で相手の信頼を生む。チームの総合力で最適解を導く。顧客の望む姿でもある。
専門家と連携するサービスの提供は強みになる。営業担当者がすべて対応しなければ不安を抱かせてしまうとの声があるが、外注化は、「心や時間の余裕を生み、顧客と同じ目線で丁寧に対応できる時間を創れる。それぞれが専門領域で力を発揮すれば、顧客満足度が高まる」(iYell社長室長の石川仁健氏)。
人材の採用で
今春の新卒採用者が業務に取り組み始めた。早く成長してもらいその活躍に期待したいが、人材の育成には時間が掛かる。そこで、住まいの提案スキルの習得に注力できるよう、住宅ローン商品の提案を外注化し、業務を効率化する。その結果、働き方改革の長時間労働を是正し、スマートな働き方ができる。仕事の新しい姿を示せれば、人手不足の中、来年の新卒採用と即戦力化にも期待が持てる。