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不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(62) ~畑中学 取引実践ポイント~ 清算金が売上げ扱いのケースも お金の流れが見える「清算書(2)」

 今回は清算金の計算方法について述べてみる。おさらいとなるが清算書の目的は顧客から見て、「この金額を受け取れば(振り込めば)良い」とお金の流れが分かりやすく、理解できるようにすることだ。そのため計算過程は明示し、計算結果は分かりやすくして、顧客が納得と理解ができるように作成していく。

 まずは固定資産税と都市計画税の清算金。売主から納付通知書を預かり、記載されている税額をベースに計算していく。納税通知書がない場合は公課証明書記載の税額の利用でも構わないが、実際の税額は端数調整されているので、異なる税額であることは意識しておこう。清算金は日割りで計算を行う。起算日は1月1日か4月1日。

 エリアによって用いる起算日は異なる。一般的には東日本が前者、西日本が後者と言われているが、実務では西日本でも1月1日起算日だったりすることもあるので、エリアの商習慣に従って決めていく。起算日から引き渡し日の前日分までを売主が負担、引き渡し日以降分を買主の負担として、税額×負担日数/365日(うるう年は366日)で清算金を計算していく。起算日が1月1日で引き渡し日が10月8日なら12月31日までの85日間が買主負担となる。税額が20万円なら×85日/365日として清算金は4万6575円となる。1円未満の扱いにルールはないが、四捨五入か切り捨てで構わないだろう。なお、うるう年は西暦を4で割り切れる年。今年(2024年)はうるう年となる。次の28年も気をつけていこう。

 ここまでが原則だが、売主が課税事業者の場合は建物部分の清算金には消費税がかかる。理由は清算金も売り上げとして扱われるためとのこと。そのため不動産会社や建設会社が売主として多い建売住宅やリノベマンションは注意して計算していこう。区分所有住戸の管理費と修繕積立金の清算は当月分のみならず翌月分、翌々月分を含める点に注意する。理由は買主への口座振替の手続きに1~2カ月ほど時間がかかるためだ。

 また、当月分を当月に徴収ではなく、翌月分を当月に徴収ということもある。そのため売主の口座から翌月分に引き落としが掛かるので、買主との間で清算をすることになる。管理に係る重要事項調査報告書か、管理会社に電話をして口座振替の手続き確認を取ろう。月額2万円の管理費・修繕積立金を当月分の当月徴収の場合、10月8日の引き渡しなら2万円×24日/31日=1万5483円となる。

 ただし、翌月分も加えるなら更に月額2万円を加えた3万5483円が清算金となる。この翌月分等の加算をし忘れてしまうと、引き渡し後に売主から「口座から管理費と修繕積立金が引き落とされる」と連絡を受けて、買主へ連絡を取ったり、管理会社から返還を受ける手続きを取ったりで大変となる。余計な仕事が生じないように気を付けよう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。